上尾中央総合病院心臓血管センター長・一色高明氏に聞く
(2)医療DXの壁を超える──救急医療とテクノロジーの間に人が果たす役割

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

テクノロジーは使う人の意志が反映されてこそ意味がある

桐原 刊行からひと月たちましたが、反響はいかがでしょうか。

一色 意外と救急隊員以外の医師とか医療従事者にも読まれているようです。なぜかというと、病院に運ばれる前の心電図は見たことがない人が結構多いんです。

桐原 そういえば、そうですね。

一色 本のなかでもいくつかありますが、救急車のなかでとったものと、運ばれてきたときの心電図が違うというケースが結構あるんですね。

桐原 それは貴重ですね。両者を並べていますから違いも一目瞭然です。

一色 こんなに変わることがあるのかと、すごい勉強になるって感想をいただきました。あと、救急車のなかでは異常な波形だったけど、病院に来たら正常という心電図もあります。後者だけ見ると大丈夫と判断しがちですが、前者の心電図を見て、やっぱり治療した方がいいという判断になることもあります。

桐原 テクノロジーは人が間に介在して、人と共存するものでなければいけないと思っているのですが、まさにいまのお話も腑に落ちました。新しいシステムも、使う人たちの関心があって、目的があって、意志があってはじめて意味のあるもの、価値のあるものになるのですね。

一色 おっしゃるとおりですね。これまでにも12誘導心電図の読影に関する本はたくさんあったのですが、循環器の専門医師が救急隊員に向けて書いた本はないんですね。そういう意味では、新しい視点で書かれているので読みやすいんじゃないかなと思っています。

桐原 救急隊の方とか医療関係の方がこの本を読みたがる理由もよくわかりました。プレホスピタルの状態でこのきれいなデータが取れているということが相当貴重ということですね。本書の刊行には大きな意義があると思いますし、ぜひ自治体の方にもメッセージが届くといいですね。(了)

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