上尾中央総合病院心臓血管センター長・一色高明氏に聞く
(1)1秒が生死を分ける──救命医療を支える最先端テクノロジー
プレホスピタル心電図の伝送を可能にしたSCUNA
一色 もうだいぶ前から海外ではプレホスピタル心電図の伝送が重要だと言われていたのですが、なかなか日本の救急隊に配備されてこなかった。それはいくつか理由があるのですが、そこをブレイクスルーして出てきたのがメハーゲンさんのSCUNA*のシステムです。
*SCUNA 藤田英雄氏(自治医科大学附属さいたま医療センター循環器内科主任教授)と株式会社メハーゲンが共同開発した12誘導心電図伝送システム。高精細なモバイル12誘導心電計とクラウドサーバーを活用することで、これまで難しいとされていた救急車から病院への心電図の伝送を実現した。
桐原 SCUNAはそれまでのシステムとどこが違っていたのでしょうか。
一色 これまでも救急車から心電図を送るシステムはいくつかありましたが、画像の質に問題がありました。画像が鮮明でないと診断能力が激減します。心電図は少し揺れただけで波形が大きくブレてしまいます。患者さんが苦しくて息をしただけでもブレるんです。物理的な動きだけではなくて電子的な動きにも弱くて、いろいろな外部の電波にも影響されてノイズが入ってしまいます。また、伝送速度も遅かったですし、特定の回線を使うので特定のシステムを持っている人しか見られなかったという問題もありました。
桐原 機能の問題とネットワークの問題があったのですね。
一色 ところがこのSCUNAの心電計は、そういうノイズがないきれいな心電図がとれます。これは画期的でした。きれいな波形で、かつ、クラウドでどこからでもすぐに見ることができるという、2つのポイントが決め手になって成功したんだと思います。

SCUNAの仕組み図(株式会社メハーゲン提供)
桐原 SCUNAの利用状況をおしえていただけますか。
一色 上尾中央総合病院では、SCUNAを導入する2年前の2015年に循環器ホットラインを開設しました。救急隊から病院の救急部ではなく循環器内科の専門医に直接電話が入るというシステムです。専門医は救急隊と患者さんの状態を直接やりとりするわけですが、そこで心電図の画像が重要になる。ホットラインで現場の隊員と話をしながら心電図を確認して心筋梗塞だと判明したら、すぐに病院に搬送するように指示をして、直ちに血管造影室の準備に入ることができます。心電図の画像を確認できるかできないかの違いがたいへん大きいわけです。上尾市消防本部では2017年からSCUNAを2台導入して、その後に埼玉県央広域消防本部にも導入していただき、現在は全部で8台が稼働しています。
桐原 現在までにどのくらいの件数に利用されていますか。
一色 2023年3月に総件数が1000件を超え、この6月で1,057件になりました。すべての心電図の記録を残しています。