日本大学文理学部 情報科学科准教授・大澤 正彦氏に聞く
第1回 ドラえもん創造の哲学:擬人化と相互適応で立ち上がるAI

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

人とAIが互いに歩み寄る「相互適応」という考え方

対話ではなく“横の関係”から生まれる心のかたち

みんなに認められるって、どう考えればいいんですか。

大澤 友達の定義はなんですかと聞かれたらどう答えますか。お互いに友達だと思っていたら友達なんです。それと同じことです。人間同士の関係性は別に定義があるわけではないですよね。週1回LINEしているからとか、月1回会っているからとか、そういう条件で線は引いてないはずです。そうした普通に人間同士で使っている定義を、ドラえもんに適応したらどうだろう、みんなからドラえもんと認められるということを通してドラえもんになるのではないかと。

社会がドラえもんであると受容したときにドラえもんが現れるというイメージでしょうか。

大澤 みんなにドラえもんと認められやすくなるために「心を感じられるロボット」を実現する研究に取り組んでいます。のび太とドラえもんのように人とロボットが認め合うとはどういうことかを解明できたとき、ドラえもんの実現に近づくのではないかと考えています。ディープラーニングをはじめとするAIの先端技術に加え、認知科学、神経科学、心理学などの知見も用いて、知能とは何か、心とは何かについて探究しています。

歩み寄りの先に立ち上がる、新しいヒューマンエージェント像

ドラえもんを語るときに、自律性を持つとか意図や目的を持つ存在と言われますが。

大澤 それすらも言わなくていいと思っています。僕はいろんなドラえもん大好きな人に出会ってきたんですけど、なかには、自分にとってドラえもんはロボットではないという人もいるんです。ドラえもんをつくる営みを通して、そういう人たちを誰ひとり否定してはいけないと思いました。なので、ドラえもんとは自律しているもの、AIが搭載しているものという言い方も僕は一切していません。

慶応大の栗原聡先生はいまの道具型AIに対して自律性を持つドラえもん型AIが必要なんだというご説明をされていますが、そのあたりはどうお考えですか。

大澤 どうしたら多くの人に認めてもらえるのかの手段として、僕は自律性や意図を持つという話があるのかなと思います。それが定義ではなくて、手段だということが大事だと思うんですね。さっき僕が口にした認め合うことのために何をすればいいかを考えていて、「相互適応」というキーワードを選択的に使っています。もっと一般的な言葉だったら、「歩み寄る」ですね。今までの科学技術は、人間が基準を決めて、ここにたどり着いたら使えます、売ってもいいですという縦の関係だったと思うんですけど、ドラえもんをつくるプロセスは横の関係なんだと思います。人がいて、AIなり技術があって、人間はどこまで歩み寄れるのか、ロボットはどこまで歩み寄れるのか、お互いに歩み寄って接するところにドラえもんの誕生があると思います。

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