AIは「意識」をもつのか?
第1回 意識の理論を求めて――大泉匡史氏のアプローチ
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2025.02.17
聞き手
松下 安武
科学ライター・編集者。大学では応用物理学を専攻。20年以上にわたり、科学全般について取材してきた。特に興味のある分野は物理学、宇宙、生命の起源、意識など。
AIは脳を参考にして作られた
既存のコンピュータは0と1のデジタル信号を使って計算を行っている。たとえば、電流が流れていない状態を0、電流が流れている状態を1とするといったぐあいだ。半導体でできた素子に電気信号を入力し、何らかの処理(演算)を施したうえで電気信号を出力する。その繰り返しで、動画を表示したり、表計算を実行したりしているわけだ。
では翻って私たちの脳はどういう仕組みで何かを思考したり、意識を生じさせたりしているのだろうか? 実は脳も基本的には、ニューロンが電気信号や化学信号(情報を伝達する物質)をやり取りすることによって機能している。人間の意識もたくさんの素子(ニューロン)の間での信号のやり取りによって生じているのだ。このことから考えると、AIにだって意識が生じてもよさそうな気がしてこないだろうか。
ニューロンは、隣のニューロンに信号を伝える「軸索」を伸ばしている(図1-1左)。軸索は、隣のニューロンの「樹状突起」と呼ばれる木の枝のような突起に接続する。軸索の末端と樹状突起の接続部は「シナプス」と呼ばれる。

図1-1 脳のニューロンのネットワーク(左)とAIのニューラルネットワーク(右)
一つのニューロンは多数のニューロンとの間でシナプスを形成し、さまざまな信号を受け取る。これらの信号には処理が施され、その値がある閾値を超えると、隣のニューロンに信号を出力する。脳の中では、絶えずこういった信号のやり取りが無数のニューロンの間で行われているのである。
現在のAIは、以上のような脳の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」が基礎になっている。ニューロンを模した人工ニューロンは、複数の人工ニューロンから入力信号を受け取り、計算を施した上で出力信号を次の人工ニューロンに伝えるようになっている(図1-1右)。