AIのアルゴリズム・バイアスを糺すのはだれか
情報技術進化の過程で女性たちが示してきたもの
世界の終わりを嘆くよりも現実の課題に向き合うこと
学習データに起因するAIのバイアスについて、ビッグ・テックに数えられる各社もその対策に乗り出してはいる。しかしAIビジネスが巨大化するのに伴って、追いつかなくなっているのが実状だ。
TIME誌は、ChatGPTが有害なコンテンツを認識するためのデータ処理のために、Open AI社がケニア人労働者を時給2ドル(約260円)未満の低賃金で雇用していることを明らかにした。同誌の取材に応じた現地労働者は、暴力や殺人、強姦などにまつわる大量のテキストを読み分類する作業を「拷問のようだった」と語っている。
The New York TimesはMeta社がFacebook上の投稿を監視するコンテンツ・モデレーターを務める社員の多くが深刻なPTSDや抑うつ症状に苦しんでいることを報じた。同社は現在、裁判所より従業員に補償やメンタルヘルス支援を提供することを命じられている。また同社はコンテンツ・モデレーションの多くをアクセンチュアに外注しているが、ニューヨーク大学法学部教授のポール・バレットは、これを責任の外部帰属化であると指摘している。
前回ここでトランス・ヒューマニストを標榜するテクノ・エリートたちの抱く終末論的な志向について批判的に書いた。“AI界のゴッド・ファーザー”の異名を持ち、ディープ・ニューラル・ネットワークの開発においておそらく最大の貢献を果たしたジェフリー・ヒントンがGoogle社を退社した際に理由として挙げたのもAIによる「人類滅亡の危機」だった。不遇をかこいビッグ・テックを去った女性研究者たちは、一様にAIがコントロール不可能なものではないことを主張している。言い換えれば、現実を超えていきなり世界の終わりを想定するような逃避的な思考に走ったりはしない。当然ながら、中期的には人類は滅びないし、現実を超えた未来も存在しない。ずっとあとの世界を憂慮してみせるよりも、現下の偏見や暴力をなくして、よりよい未来に接続すること――情報技術のもとで女性たちが示してきたものは、見えないふりをしてきた目の前の問題を解決することなのかもしれない。<了>
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