東京大学 先端科学技術研究センター 吉村 有司氏に聞く
(1)ビッグデータ活用で実現する市民参加型のまちづくり
データという共通言語を用いることで横断したコミュニケーションを可能に
東日本大震災の直後は、コミュニティや住民の互助的行動ということが盛んに言われました。しかし、復興五輪を謳う東京のオリンピックの後には旧来型の利権構造が明らかになったり、耐震工事を含む現在進行中の再開発が旧来型のゼネコン主導型だったりするのをみると、そこにコミュニティという変数がうまく機能していないのではないか、と疑問をおぼえます。
吉村 東日本大震災については、そのころ僕は海外にいましたので、よくわからないというのが正直なところです。ただ、まちづくりや都市計画を行うにあたって、コミュニティという要素はとても重要で、そこでどのように意見を集め、その意見をどう調整していくか、合意を形成していくかというところがカギになります。このことについては、世界でもいろいろな方が研究されていますし、先行研究はそれこそ星の数ほど存在します。僕の研究の場合は、こうした分野に大規模データと機械学習を持ち込んだことに新規性があると思っています。ビッグデータを活用しながらコミュニティを醸成していき、都市を育てていくことが、自分の役割だと思っています。
従来、都市についての研究は、一方で建築家や都市計画の立場の人々が設計やデザインという視点から行い、他方では社会学やカルチュラル・スタディーズといった立場の人々が文化研究という視点から行ってきました。しかし、そもそもの視点が異なるために、都市像というものが定まらないことが多かったように思います。先生の研究を拝見すると、データを用いることで、両者のイメージを近づけることが可能なのではないかと思います。
吉村 それは僕もよく実感するところです。データのよいところは、複数の分野を横串にできるところにあります。今まで分野ごとで議論されていたことについて、データという共通の言語を用いることで、横断したコミュニケーションをとることが可能になる。さまざまな分野の方々と、同じ目的を持ってコミュニケーションをはかることができるのは、データを用いて得られる大きなメリットです。
現在、コロナウイルスの感染対策で、多くの方がリモートで仕事をしています。仕事はリモートで行いつつ、これまで通勤などに割かれていたリソースを近隣のローカルなコミュニケーションに配分する、というスキームで、地域コミュニティの立ち上がりを期待できたかにも思えたのですが。
吉村 コロナ禍やその影響については、まだ僕もきちんと整理がついていません。さまざまなことが起こるなかで、ZOOM などを援用した会議や授業などのテレコミュニケーションが社会に浸透しました。2019 年以前には Skype があり、僕も MIT (マサチューセッツ工科大学)にいたときは、日本やバルセロナと Skype で会議をしたりしていましたが、やはり対面での会議の副次要素として捉えられていました。そのころからすると、日常的にオンラインでのコミュニケーションが普及してきたというのは、非常によいことではないかなと思います。新しいコミュニケーションのチャネルができた、というようにポジティブに捉えることができるのではないでしょうか。その一方で、オンラインだけではできないことも顕在化してきました。対面のコミュニケーションの大切さや、住むことの意義などが浮き彫りになったのが、この 3 年間だったと思います。