生成AIでビジネスが激変する
週刊ダイヤモンド編集委員が語るChatGPTとの付き合い方

REPORTおすすめ

ChatGPTと人間はどこが違うのか

ChatGPTが行なっていることは、人間が脳で言語を処理していることと“やや”似ています。とはいえ、次に続く言葉を探しているだけなので、一見、人間のように思考しているように見えますが、心や意思があるわけではありません。このことは覚えておいたほうが良いと思います。

GPTのGはGenerativeで、人間が書いたかのような自然なテキストを「生成する」という意味です。PはPre-trainedで、これは書籍・記事・Webサイトなどの膨大な量のテキストを事前学習していることを表しています。たとえば、GPT-1(2018)では書籍7000冊で学習させたとアナウンスされています。GPT-2(2019)では大量のWebページを学習、GPT-3(2020)はもっと大量のWebページを学習させたとしています。GPT-3.5(2022)になると人の手でファインチューニングしていますとアナウンスし、ついにGPT-4(2023)では非公表になりました。最後のTはTransformerで、深層学習モデルのことを指します。従来モデルの「長期記憶が苦手」「並列処理ができない」をTransformerが克服することで劇的に処理が高速化しました。文頭から順番に一つずつ単語を処理する必要がなく、従来手法に比べ処理速度も速い。学習データが大規模になるほど予測精度が向上するのも特徴です。ChatGPTはTransformerを用いることで、webから集めた膨大な単語を学習し、それをGPU1を使って並列処理することで、自然な文章の生成を可能にしました。生成AIが大量のデータを学習するには、高性能なGPUを備えた多数のサーバーと、それらを収める大規模なデータセンターが必要になります。

ChatGPTが得意なこと

ChatGPTは基本的にはテキスト生成AIなので、文章を作るのが最も得意です。ユーザーからのプロンプトを基にして、さまざまな文章を生成できます。メールの文章も書いてくれますし、「報告書」などフォーマットが決まった文章を書くのは得意中の得意です。ダミーデータを作るのも一瞬ですし、CSVでの出力もできます。

情報を検索して回答するのも得意です、とChatGPT自身も言ってます。 たとえば、「太陽系の惑星は何個?」や「シェークスピアの代表作は?」といった一般的な質問や難易度の高い質問に答えてくれます。ただし、検索できる内容は2021年9月までなので注意してください。新しい情報には原則対応していないので、そこはGoogleのBardなど、検索が得意なAIを使ったほうがいいでしょう。

教育的サポートにも有用です。学問や技術的な質問に答えることができるため、学習のサポートツールとしての利用には結構使えます。「小学生にも分かるように、喩え話を入れて説明してください」「大学生が理解できるような説明にしてください」など、レベルを指定して説明させるとびっくりするほど上手なので、ぜひ試してみていただきたいです。また、プログラムを書くのは非常に得意です。私自身はプログラマーではないのであまり関係ないなと思っていたのですが、最近個人的にいいなと感じたのは、OfficeのVBA(マクロ)を書かせることです。Excelのマクロはいろんなところに情報がありますが、WordやPowerPointのマクロもChatGPTは一瞬で書いてくれて、仕事の効率がずいぶん上がるようになりました。実は今日の講演も、スライドの構成はChatGPTが考えてくれました。さすがにそのまま使ったわけではなくて、叩き台にして足したり引いたりしてPowerPointをまとめましたが。

あとはクリエイティブな提案をしてくれます。ユーザーがアイデアやインスピレーションを求めているとき、ChatGPTはクリエイティブな提案やアドバイスを提供してくれます。キャッチコピーを考えてもらったり、記事のタイトルを考えてもらったりに使っています。とにかく速くて大量に考えてくれるのがいいところなので、そのまま使うことは滅多にないですが、叩き台としては十分以上です。

翻訳機能も非常に優れています。昔の翻訳機は文字単位で訳していたのですが、ChatGPTはいったん文章を全部読んでから訳してくれるので、文脈を外しません。英文メールを書くときなど、用途によっては翻訳アプリより便利だと感じます。

さらに今年の夏に新機能が発表されました。一つは「カスタム・インストラクション」と言って、ChatGPTが答えを出力するときの条件などを事前に決めておける機能が追加されました。ChatGPTに知っておいてほしい事前情報やどのように回答してほしいかを書いておくと、プロンプトを書くときにキャラクター条件をいちいち含める必要がなくなりました。二つ目が「コード・インタープリター」で、自然言語でやりたいことを入力するとPythonのプログラムを書いてくれます。しかもプログラムにどういう意味があるのかについても詳しく解説してくれます。

ChatGPTのリスクと課題

ChatGPTは便利ですがリスクもあります。一つはデータのプライバシーとセキュリティに関するリスクです。ChatGPTを使うということはデータがOpenAIに流れてしまうので、企業で本格的にChatGPTを導入する場合は、機密データを入力しないよう、また個人情報などが外部に漏洩しないような仕組みが必須になります。有料版には「入力された情報を学習しない」という機能がありますが、本格的に企業でChat GPTを導入するということになると、社内サーバを立てて使うとか、マイクロソフトやGoogle、AmazonのChatGPT対応クラウドを使うなどの対策をする必要があります。

もう一つ、信頼性と偏見の問題があります。ChatGPTは知らないことでも「知りません」とは言わずに、堂々と嘘をついてきます。ハルシネーション(幻覚)と呼んでいるのですが、事実に基づかない情報を生成する現象のことです。まるでAIが“幻覚”を見ているかのように、もっともらしい嘘を出力するため、このように呼ばれています。なぜこんなことが起こるのかというと、インターネットなどから収集した大量のデータでモデルを学習するため、偏ったデータや誤った情報が含まれるデータを学習した結果、ハルシネーションが発生してしまうことがあります。また、言語モデルはある単語に対し次に続く確率が高い単語を予測するものであり、正しい情報を出力することを目的として訓練されているわけではありません。そのため、文脈には合っていても、真実ではない情報を出力してしまうことがよくあります。

さらに、ChatGPTを使う人が爆発的に増えた結果、専門家が予想していたよりも早く、学習結果が悪く働いて回答を間違うケースも出てきました。随時修正が行われているようですが、GPTの学習速度があまりにも速すぎるために、こうした事態も起こるのです。

ChatGPTはどんな人に向いているのか

Chat GPTの話をすると「私、IT苦手だから分からない」と拒否反応を示す人がいますが、ITに苦手意識のある人こそ、ChatGPTを使ってほしいです。プログラム言語を書けなくとも、普段話している言葉で入力すれば何らか答えを返してくれるのがChatGPTです。これは、ベテラン社員が経験の浅い若手社員やアルバイトに「これやっといて」と指示を出すのと似ていませんか。「できません」と返ってきたり、間違ったりした場合には、「じゃあこうすればいいんじゃない?」とアドバイスすることも、普段会社でやられていることだと思います。人に指示をするのと同じようにプロンプトを書けばいいのです。ChatGPTは間違えることもあるし、存在しない情報を堂々と書くこともあるので、信じすぎずに自分でもチェックしたり、何度もやらせたりするマインドが大事です。Chat GPTは非常に汎用的なので、他の人の使い方を真似して、自分なりの使い方を模索するとよいと思います。

未来のビジネス環境とChatGPT

今後、ChatGPTを含め生成AIが当たり前に使われる世の中になることは間違いないでしょう。とにかく進化が速いのが特徴です。先月できなかったことが今月はできるようになっているといったふうに、数カ月おきに新機能が追加され、どんどん仕様が変更されています。これまでの25年間と比較しても、こんなにエキサイティングな状況はなかなかないのではないでしょうか。

今後はさまざまなビジネス環境で、さらにデジタル化と自動化が進むと思われます。これまでは労力や手間やコストがかかりすぎるので人間にはできなかったこと~例えば一人ひとりにカスタマイズしたサービスなど~が、生成AIを導入することによって可能になってくるでしょう。新しいサービスの開発や、すでにあるサービスの付加機能追加がものすごい速さで進むだろうし、現にそうなりつつあります。

最後にこれだけは言っておきたいのですが、むやみにAIを怖がる人が多すぎると感じています。雑誌などでAIの特集をやると必ず、「これから消える職業ランキング」とか「こういう人は職を失う」といった記事を作りたがるし、実際読まれもするのですが、ChatGPTがどんなにすごくても所詮はツールであることを忘れてはいけないと思うのです。誰でも使えますから、まずは自分で触ってみた上で、「こういうことができる」「これはできない、苦手らしい」ということを自分で体験するのが大事なのではないでしょうか。(了)

1 2