LA(Learning Analytics)で学びをつなげる
京都大学学術情報メディアセンター教授 緒方広明氏に聞く(2)

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聞き手 都築 正明
IT批評編集部

時代の変化に合わせた教育のありよう

現在、ChatGPTが大きく話題になっています。基礎学力のついていない12歳以前の子どもにChatGPTを使わせるべきではないとか、間違った情報を生成することに危惧をおぼえると主張する人もいます。先生はどうお考えでしょう。

緒方 疑問が生じたときに、その場で十分な情報を得ることができるというのは、学習において重要なことだと思います。疑問を放置することがなくなりますし、得られた情報を基に、より本質的な学びに向かうことも考えられます。重要なのは、そうしたツールについて先生や保護者の方々が知っていることだと思います。教える側が知っていれば、ChatGPTが生成した間違った答えを子どもが鵜呑みにするのを放置するのでなく、そこから新しい学びの力を育むこともできるわけですから。

今でも紙の辞書の是非やGoogle検索の是非をいう人はいますが、すでにあるものを使わないというのは非合理ですね。

緒方 教育がそこにキャッチアップできなくなるほうが問題だと思います。

明治時代に義務教育ができたころは、国民国家の担い手をつくるという教育意図があったと思います。また戦後の学制改革では、勤勉な労働者の輩出が求められました。学習を個別最適化する背景として、多様性のもとでこうした一元的な教育目的が無効化しつつあることが考えられるのでしょうか。

緒方 児童生徒や学生も多様化していますし、学ぶ内容も多様化しています。その中では、学びを均質化することよりも、さまざまな学び方を許容していくことのほうが重要だと思います。デジタルツールの普及で、学校内にとらわれずいつでも・どこでも・だれでも学ぶことができる環境が進んでいますから。

国も国民国家の枠を超えてグローバル化しているし、教育動機や教育意図も多様化しているということでしょうか。

緒方 たとえば私が学生のときは、情報技術というのは電子工学の1分野でした。現在では、画像処理や自然言語処理など、さまざまなことを学ばなければなりません。義務教育などで基礎教養を身につけることは必要ですが、その先は興味関心に基づいたことを深く学んでほしいですし、そのためにも自分で学ぶ力を身につけてほしいと思います。

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