AIモデル普及推進協会代表理事・中山 佑樹氏に聞く
第1回 バーチャルヒューマン時代の信頼基盤を築く
ファッション系ECサイトをはじめとして、AIによるバーチャルヒューマン(AIモデル)の活用が広がるなか、著作権や倫理面の課題が浮上している。こうした背景を受けて設立された「一般社団法人AIモデル普及推進協会」は、誰の権利も不当に侵害せず、安心してAIモデルを活用できる環境づくりを目指す。代表理事の中山佑樹氏に、協会設立の経緯を聞いた。
中山 佑樹(なかやま ゆうき)
一般社団法人AIモデル普及推進協会代表理事、AI model株式会社 取締役CTO
慶應義塾大学卒業後、新卒で広告制作会社に入社。TVCMのPM/Prとして勤務。その後、WEBサービスやアプリ・システム開発会社での勤務を経て、2020年よりAI modelの開発に携わり、現在、AI model株式会社のCTOとしてAI・システム開発統括を行う。
目次
AIモデルを安心して活用でき、誰の権利も不当に侵害しないために
IT批評編集部(以下、──)6月に一般社団法人AIモデル普及推進協会1を立ち上げられたわけですが、設立の狙いについて教えてください。
中山佑樹氏(以下、中山)AI技術で生成したバーチャルヒューマン(以下、AIモデル)は、広告・接客・プロモーションなど幅広い分野での利用が進む一方で、著作権や倫理的課題、類似性の問題など新たな課題が表面化してきています。こうした課題に対応し、開発・生成・運用の正常化を図ることで、利用企業が安心して活用でき、誰の権利も不当に侵害しない基盤を整備することを目的として協会を設立しました。
具体的にはどのような取り組みになるのでしょうか。
中山 業界全体で連携し、ガイドラインの策定や類似性チェックシステムの提供、情報提供や普及啓発活動を行なっていきます。
すでにガイドラインも策定されていますね。
中山 はい。人工知能学会の会長で慶應義塾大学理工学部教授の栗原聡先生に顧問に入っていただき、さまざまな知見を頂戴して「ヴァーチャルヒューマン生成 AI サービス開発・提供ガイドライン2」を発表しました。
ガイドラインの策定でどのような効果を見込んでいますか。
中山 ガイドラインに基づきAIモデルを生成することで、AIモデルの利用企業が安心して事業拡大や事業変革などに活用できるとともに、誰の権利も侵害していないことを一般消費者にもご理解いただけるのではないかと考えています。
ガイドライン策定によってAIモデル市場の活性化につなげる
似たような団体で「デジタルヒューマン協議会3」がありますが、改めてAIモデル普及推進協会を立ち上げられたのはどういう意図があったのでしょうか。
中山 自分がAIモデルというビジネスをスタートしたときから思っていたのは、ビジネスカテゴリーをデザインして整理していくことの重要性です。「デジタルヒューマン」であるとか「生成AI」という括りは、一つの協会で扱うトピックとしては広すぎると思っています。「デジタルヒューマン」と言った場合、CGでつくったものや人格とか音声、場合によってはロボティクスまで包含してしまいます。そうなると、いろんな領域の会社さんが入ってきますから、議論の立て付けが難しくなって、関係者全員が納得するガイドラインを作ることは難しいだろうと思うんです。
確かに。領域が違えば課題も変わるわけですから、カテゴリを明確にしないと議論は進みませんね。
中山 「生成AIでつくるバーチャルヒューマンの協会」くらいのサイズ感にしないとガイドラインはできないだろうと思いました。同様に生成AIについても、音楽における生成AIガイドラインとかイラストにおける生成AIガイドラインというように、カテゴリを狭めたほうが話がまとまりやすいのではないかと思っています。
AIモデルの開発を依頼するクライアントにとっても、協会やガイドラインの存在は重要ですね。
中山 そうですね。ガイドラインを守っている会社を選んで依頼すれば、極論、何かがあったときのセーフティラインになります。例えばAIモデルの開発で起業したばかりのベンチャーが、自分たち自身で法的・倫理的な根拠を示すのは難しいですし、依頼する企業も何を根拠に相手を信頼していいか戸惑うはずです。ガイドラインが存在することによって双方が安心してビジネスを進められるので、市場の活性化にもつながると考えています。