AIは「意識」をもつのか?
第2回 AIにも適用できる可能性がある「意識の統合情報理論」とは?

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聞き手 松下 安武
科学ライター・編集者。大学では応用物理学を専攻。20年以上にわたり、科学全般について取材してきた。特に興味のある分野は物理学、宇宙、生命の起源、意識など。

「意識が生じるネットワーク」と「意識が生じないネットワーク」

私たちの脳では、どのような場合に意識が生じ、どのような場合に意識が生じないのだろうか? このことのヒントを小脳が教えてくれている(図2-4)。

小脳は後頭部の下側にあり、ニューロンの総数は何と1000億個程度にもなると考えられている。思考や意識などに関わっている大脳のニューロンの総数は100億個程度と言われているので、小脳の方がニューロンの数は圧倒的に多いのである。にもかかわらず、小脳は意識状態に大きな影響を与えないと考えられている。実際、医療上の理由で小脳全体を切除した患者でも、意識に変化はほとんど見られないのである。

図2-4 脳の全体像

小脳の重要な働きの一つに運動の制御がある。例えば、ピアノの演奏では、最初は指の動きなどを意識しながら練習するだろう。さらに練習を重ねていくと、ほとんど無意識に指が動くようになってくる。小脳はこのような無意識下での運動の制御に深く関わっている。

では、なぜ小脳のニューロンの活動は意識との関連が弱いのだろうか。

大泉 小脳は多数のモジュール(機能単位)から構成されており、モジュール間の情報のやり取りが少ないと考えられています。つまり、モジュール間では情報があまり統合されていないのです。その結果、統合情報理論に基づいて考えると、小脳の統合情報量は大脳に比べて非常に小さいことになります。そのため、小脳は意識状態に大きな影響を与えないのだと考えられます。

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