勅使川原 真衣氏に聞く
第2回 働く現場で見た「生きづらさ」の実像

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

テクノロジーは単純化された指標で使わなければ可能性はある

以前に「IT批評」でインタビューした東大大学院の准教授である馬場雪乃先生が、AIを使って会議を上手にファシリテーションするソフトを開発しています。高校生の学級会議に導入してみたら、今まで発言しない子は意見がない子だと思っていたら、AIを介することでけっこう意見が出てきて、発見があったという。それは幸せなテクノロジーの活用方法だなと思いました。

勅使川原 反射的にコミュニケーションがとれる人ばかりが評価されてきたので、その方向の活用って待たれますね。あとは、コミュニケーションツールがあったときに、そのそれぞれの特性ごとに、語尾を自動補正してくれるとか、質問の仕方が相手に合ったものになっていくとか、そういうのがあったら面白いなと思います。

ファインチューニングという技術でできると思います。おじいちゃんおばあちゃんが健康な生活を送るために、孫のキャラクターで話しかけたら聞いてくれそうです。今日は何キロカロリー消費しましたではなくて、「おじいちゃん、今日はいっぱい歩いたね」とか、そういう使い方はあるかもしれません。

勅使川原 面白い。問いが変わっていく方向でテクノロジーが使えるといいですね。

きっとこういう話がたくさん出てくるのは、やっぱりテクノロジーに追いかけられて生きづらいと思っている人たちが、一定数いるからでしょうね。生成AIが出てきて脅威論が叫ばれているので、よけいにそう感じざるを得ない。使い方次第では、より便利になる、幸せになる方向性もあるはずなんですけど。

勅使川原 効率化と能力の向上みたいな、一元的で単純化された指標で使わなければ、可能性はあると思います。

HRテックでのAIの活用を見ると、能力の見える化とか最適な人材配置みたいな話になっています。

勅使川原 『「能力」の生きづらさをほぐす』のなかで特に強調したかったのが、今の社会が、わかりやすさという価値にすごく引っ張られている社会であることです。そこを自覚したいという意味で書いた本でもあります。

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