勅使川原 真衣氏に聞く
第2回 働く現場で見た「生きづらさ」の実像

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

労働現場では能力が商品化されている

ヘイ グループに行かれたことで、能力主義、メリトクラシーを目の当たりにしたという感じなんですか。

勅使川原 メリトクラシーの批判を教育社会学で学んで、敵陣視察の延長線で人材開発というコンサルの分野に行ってみて、 結局、労働の現場においても、能力というものが商品化されている、商業化している現象だということを発見しました。それを公に書いたのは、私しかいないと思っています。

どんな仕事だったのですか。

勅使川原 2014年のクリスマスイブに、六本木のミッドタウンに入っている某企業の部長選抜のアセスメントフィードバックに上司と二人で行ったことが印象に残っています。街は華やいでいるんですけど、その会社さんはお通夜みたいになっていました。だって、コンサルを名乗る知らない人がやってきて、「あなたは部長になれます」とか、「なれません」とか言う仕事なんですから、本当に歪んでるなと思いました。

ツールを使って数値化されたデータを見てフィードバックするわけですね。

勅使川原 まさにそうです。選抜に能力検査が使われていて、それを言いわたすんですが、死刑宣告みたいになっちゃって。もう何を言われても大丈夫なようにハンカチ握りしめてるみたいな。部長職と言えば45から55歳ぐらいの人たちですから、家庭を持っているお父さんとかお母さんがこんなふうになっているのを社会はもっと知ったほうがいいんじゃないかなって思って書きました。

その会社さんは今もそれは続けられているんですか。

勅使川原 たぶんやられていると思います。結局、人事部は直には言いわたせないので、客観的に科学的なツールを使えば能力が測れますって言い切ってくれる人事コンサルがいいように使われているだけだと思うんですけどね。

なるほど。難しいというか、やりにくいことを外部に任せる。社会全体でアカウンタビリティやエビデンスを求められるという背景があって、科学的なツールを使っていると説明にはいいですからね。株主に向けた回答欄に、上手に答えを書くということの一例みたいな話ですね。

勅使川原 本当にそうだと思います。答えふうの答えを探しつづけている。

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