半導体エネルギー研究所顧問・菊地正典氏に聞く
第4回 日本の先端半導体挑戦に必要な条件とは

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

半導体技術もAIの技術もフィードバックしながら進んでいく

中国のAI技術がどんどん成長していくことに歯止めをかける方法としては、もうハードウェア(半導体)で制限するしかないということで、アメリカが半導体の部品供給を中国に対して締めているように考えています。

菊地 先端半導体を輸出するな、頼まれてもTSMCでつくるな、装置を出すなというかたちで圧力をかけるしかないわけです。HUAWEI(中)がこのあいだ発表されたスマートフォンに5ナノぐらいでEUVを使っているんじゃないかという噂がありましたが、やっぱり使っていなかった。古い技術ならいいけれど、先端的なものはデバイスも材料も装置も出すなと圧力をかけるしかないんですね。

半導体の技術が頭打ちになると、ソフトウェアとしてのAIの開発にもブレーキがかかると見ていいわけですか。

菊地 もちろんです。生成AIでどうやって半導体のラインを構築すべきかやらせて、そのフィードバックでいい半導体ができて、これでさらにAIの研究が進んで能力が上がる。半導体技術もAIの技術もフィードバックしながら進んでいく。デジタルツインがまさにそうで、仮想空間で将来おこりうるいろんな問題をシミュレーションして、それを現実空間にフィードバックしていますよね。コンピュータリソグラフィ*もAIを使ってコンピュータにやらせることをSynopsysとかTSMCがASMLと組んで進めていますよね。

もうそこには相乗効果が起きているということですね。そのフィードバックのなかに、日本企業が入り込む余地はありますか。

菊地 むずかしいですね。あまりにも技術が進みすぎている。たとえば、第一次世界大戦までは、国の領土なんかも再編の可能性があったけれども、第二次世界大戦後に二つの超大国が世界をリードするようになると、それが不可能に近くなっていった。同じように技術も、あるレベルを超えると、そこに入り込めないし、ゲームチェンジは難しくなると思います。

今、日本は国を挙げて半導体開発に投資していますが、それなりのリスクがありますよね。

菊地 あんな待遇で能力を引き出せるかっていうと、私は難しいと思います。今だってTSMCの上級エンジニアは日本のエンジニアの数ぐらいの給料もらっています。教育や育成の仕方から変えていかなければ難しいでしょうね。バランス感覚のある人間はもちろん必要なんだけど、バランスが多少悪くても、特別な異能を持っている人を発掘して能力が発揮できる仕事を与えるとかといったことが必要で、横並びの教育制度ではぜったい無理だと思いますね。

*1:コンピュータリソグラフィ 半導体デバイスの回路パターンをシリコンウェーハ上に転写する技術で、リソグラフィとも呼ばれる。コンピュータのメモリやCPUなどの集積回路を製造する際に欠かせない技術で、マイクロメートル以下の微細加工を施すため、コンピュータを用いてリソグラフィ工程を最適化する。

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