NTTテクノクロス・大野 健彦氏に聞く
第1回 現場の暗黙知を引き出す「技能抽出」の手法とは
ワークショップ形式で暗黙知を引き出す
桐原 刺激を与えるというのは具体的にどういうことをするのですか。
大野 たとえば機械整備の場合、何をやっているかはだいたい書きだすことができますし、各現場にはマニュアルもあります。それを若手から、なぜやるのか、それをやらないとどうなるのかみたいなことを、徐々にプロセスを細かくしながらいろんなかたちの質問を投げかけていくというようなことをやっています。加えてわれわれも、ファシリテーターとして全体の議論をまわしたり、インタビューしたりと、技能継承に長く携わってきていて、きっとこの辺に技能があるはずだというところは、ある程度、目星がつくようになるわけです。そこで、われわれからも投げかけを行います。いろんな方から異なった角度で投げかけを行うわけです。そうすると、ベテランが1人でパソコンの前で自分の技能らしきものを書きだすよりも、はるかに多くの答えが出てきます。
桐原 ベテランの方が答える技能というのは、ベテランの方たちのなかでは共有されていたり標準化されているものなのか、それとも属人的なものでしょうか。
大野 暗黙知は基本的には形式化されていません。共通性のある知識はマニュアルとして大抵どの現場でも自分たちでつくっていますが、自分の経験から獲得してきた知識は現場に近ければ近いほどかなり個人差が出てきます。形式知ももちろん重要ですが、そこに暗黙知を加えて熟達者から非熟達者に技能伝承していくことに取り組んでいます。
桐原 個人差が大きな場合にはどう考えればいいのですか。
大野 たとえば営業のノウハウなんかは人によってスタイルが違って、お客さんへのアプローチの仕方は個人差が大きいですよね。でもそれはそれで全然よくて、こういうスタイルもあれば、こういうときには違うスタイルもあるというかたちで整理していけばいいと考えています。
桐原 ワークショップでの質疑応答、コミュニケーションのなかで出てきたものをピックアップしていくということですね。
大野 そこをいかに掘り下げていくかが重要だと考えています。最初はほとんどドキュメントがない状態からスタートします。ワークショップでインタビューをして、ひたすら分析をしていって、最終的にはドキュメントにして社内で研修をやっていただいたり読み合わせをしていただいたりして使っていただいています。それが「勘どころ集1」と呼ばれるものです。