東京大学大学院准教授 馬場雪乃氏に聞く
(3) AIを通じて人が深く考える社会の実現に向けて

FEATUREおすすめ
聞き手 都築 正明
IT批評編集部

ユーザーとエンジニアが歩み寄るAI開発へ

機械学習は、データ数が多ければ多いほどよいわけですから、より多くの人々を巻き込めれば精度も上がりますし、データ提供者の当事者意識も高まるだろうと思います。

馬場 現在は、開発する側がクラウドソーシングでお金を払ってデータをつくってもらい、それを元にAIアプリを作成するというフローが多くとられています。私としては、AIの開発側とユーザー側が、もっと密接にコラボレーションできるのではないかと思っています。日常にある問題を解決するときに、データを取るのは協力するのでAIを開発してください、というようなボトムアップのアプローチも可能なはずです。AI開発は手軽でスピーディにできるものですし、開発スキルもコモディティ化されているので手が届きやすいのですが、そのことがあまり知られていない気がします。人もお金もそれほどかけずにできるはずなのに、開発側がノウハウを抱え込んで利潤化している印象です。

開発者とニーズを持っているユーザーとの認識の齟齬がなくなれば、もっとよいAIが開発できるということでしょうか。

馬場 AIアプリの開発をするコストにおいては、モデルの開発だけでなくデータ収集の比重も大きいですから、データを持っているユーザーと開発側が、もっと対等に開発してもよいかと思うのですが。

たとえばどこかの市が教育の課題をかかえていたときに、中学生の全データを提供してAI研究や開発を依頼して、成果物を現場でつかえるようにすれば、相補的によいものができそうです。

馬場 私も、そのようにAIを身近なものにして進むことをイメージしているのですが、まだそこには至っていません。

インタビューの冒頭で、先生が小学生のころプログラムを組まれていたお話を伺いました。以前はエンジニアが書いたのか小学生が書いたのかなどは関係なく、投稿されたBASICプログラムが雑誌に掲載されていましたよね。

馬場 せっかくコンピュータを使うのですから、そうあってほしいですね。

1 2 3