上尾中央総合病院心臓血管センター長・一色高明氏に聞く
(2)医療DXの壁を超える──救急医療とテクノロジーの間に人が果たす役割
救急現場の心電図を収めた初めての本
桐原 最後になりましたが、先生がお書きになった『プレホスピタル12誘導心電図読影講座』(近代消防社)について伺いたいと思います。「はじめに」に書かれているように、救急隊の方々を読者に想定して、わかりやすく解説するという方針でまとめられたのですね。
一色 上尾中央総合病院では、救急隊の方々にこれまでも、「この前送っていただいた心電図はこういう所見でこういう判断をしました」ということをフィードバックしていました。救急隊員のなかには勉強熱心な方もたくさんおられるので、そういう方々向けに、せっかくこれだけ心電図データが溜まったのだから、心電図読影のポイントをわかりやすく解説したらお役に立てるのではないかと思い、1冊の本にまとめました。
桐原 これまで心電図読影のための本はなかったのでしょうか。
一色 もちろんたくさん出ていますが、それは病院に来てからとった心電図であって、救急現場でとった心電図は載っていなかったのですね。
桐原 この本に載っているのは、全部救急現場でとった心電図なのですね。
一色 全部というわけではありませんが、プレホスピタルの心電図がこれだけ掲載されている本は初めてです。そこに私が解説をつけました。
桐原 救急隊員の方が心電図を読めるのと読めないのとではずいぶん違ってきますか。
一色 だいぶ違うと思います。特に急性期の重大疾患は時間との勝負ですので。間違って治療できない病院に運んでしまうと、そこからまた治療できる病院に送り出すまでにすごい時間がかかってしまいます。病院のスタッフが次の病院を探さなくてはならないからです。
桐原 なるほど。最初にどの病院に運ぶかは重要なのですね。
一色 連絡を取り合うだけで、すぐに1時間ぐらいたってしまいます。
桐原 たくさん病院のある都市部はともかくとして、地方だと致命的な問題ですね。