上尾中央総合病院心臓血管センター長・一色高明氏に聞く
(1)1秒が生死を分ける──救命医療を支える最先端テクノロジー
1秒を削る努力が救命につながる
一色 現在は、心筋梗塞とわかったらできるだけ早く病院に運んで、できるだけ早く詰まった箇所を広げるというのが最善の医療になっています。そこで、Door To Balloon Timeという指標が重要視されているのです。病院に到着してから治療まで、どのくらいのスピードで血流が再開できるかのことを指しています。
桐原 Doorは病院の入り口を指しているのですね。
一色 もう一つOnset to Balloon Timeという、心筋梗塞が発症したときから再灌流するまでの指標もあるのですが、救急車を呼ぶまでの時間がいろんな事情でまちまちですから、なかなか指標にしにくいところです。
桐原 医療でどうにかできる部分ではありませんね。
一色 すぐに救急車を呼んだ人ほど助かるわけですから、社会的な啓蒙が必要な部分と言えるでしょう。Door To Balloon Timeが注目されるのは、病院のレベルを表す可能性があるからです。病院に運ばれてから、心筋梗塞であると診断して、血管造影を行う部屋を用意して、血管造影して開く術者、それから技師さん、看護師さんたちが集まって、病院の救急の部屋からアンギオルーム(血管造影室)に人を運んで、手技を始めて、ワイヤーを血管に通して開くまでの時間がどのくらいかかるかが問われます。そこをできるだけ短くしようと各病院が努力をしてきているわけです。
桐原 これは1秒を削っていく感覚ですか。
一色 そうですね。時間を無駄にしないようにするという意味では、1秒を削るという話だと思います。
桐原 ここで救急現場から心電図を転送する話につながるのですね。
一色 その通りです。そこで冒頭に申し上げた救急体制の整備という話が出てきます。これは病院のなかの問題ではありません。プレホスピタルですから、病院に到着する前に何ができるかが重要になります。患者さんのところに救急隊が行って、そこで心電図をとって病院に連絡して届けることができたら、病院側ではすぐに準備の体制に入ることができます。心電図を見て心筋梗塞だということがわかれば、患者さんが来る前に血管造影室の用意ができます。到着してから準備を始めるのとでは、圧倒的に時間の差が大きくなります。そこにプレホスピタル心電図の意義があるのです。
桐原 1秒を短縮する意味の大きさがよくわかります。
