パスワードレス社会の到来
オンライン認証の現状と未来①

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聞き手 クロサカ タツヤ

すべてをデジタル技術でクリアすることは難しい

クロサカ 続いて岸上先生の経歴もご紹介ください。

岸上順一氏(以下、岸上) 私は、NTTの研究所やNTTアメリカなど、NTT関連の企業に30年近く勤務しました。NTTアメリカにいた1994年から2000年は、シリコンバレーが特に右肩上がりの時代で、なんでもできそうなワクワクした空気の中で過すことができました。そのころ、ジェリー・ヤン4たちと知り合い、Yahoo!やeBay、Googleのスタートアップを目の当たりにした経験が、その後のキャリアに影響していると思います。帰国して研究所に戻ってきてからは、AIや機械学習の研究にのめり込みました。NTTを退職後は、マレーシアUTAR大学で教授として2年間、教えていました。帰国後に室蘭工業大学の教授として採用されて、現在に至ります。

クロサカ どのような経緯で個人認証に携わるようになられたのですか。

岸上 帰国して半年後ぐらいに突然、村井純5さんから「W3Cに関わってくれない?」という電話がかかってきたのがきっかけです。W3Cのアドバイザリー・ボードに選出されて 6 年間務めました。その後、W3Cのアジア圏ホストの慶應義塾大学SFC研究所のW3Cのチームに所属しています。

クロサカ 村井さんの「『はい』か『イエス』で答えて」という、いつもの依頼ですね(笑)。現在のご専門はどの分野になるのでしょう。

岸上 機械学習とAIです。IDについては以前からRFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)6を使った物流のIDに取り組んだり、デジタルコンテンツのIDとして“コンテンツIDフォーラム7(cIDf)”を発足させたりしてきました。最近まではDID8(Decentralized Identifier:分散型識別子)や、その内容を保証するVerifiable Credentials9といった非中央集権的なコンセプトについて研究していました。ただし研究を進めるうちに、すべてをデジタル技術でクリアすることは難しいのではないかということも考えはじめました。今は、人が求める幸福感をもたらす社会関係資本について、最も興味を抱いています。

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