経済学者・井上智洋氏インタビュー(3)
「頭脳資本主義」の時代をいかに生きるか?
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2021.05.21
聞き手
桐原 永叔
IT批評編集長
ビッグデータという経験によって実績をあげるAI
井上 人間の直感はそんなに神秘的なものではないかもしれませんよね。ただし、ディープラーニングで再現できたとしても、「なぜ」ということはAIにはわからない。結局ユニットとユニットが繋がるリンク部分のウエイト(重み)を増やしたり減らしたりしているだけなので、理屈が立てにくいんです。人が直感でやることを理屈で説明するのが難しいように、AIが再現したものも人は説明できないし、AI自身も説明できない。だからディープラーニングのなかで何が行われているのかわからないのでブラックボックスなんて言われてしまうんですね。20世紀までのAI研究は、人間が理屈を立ててそれをコンピュータが実装するものだと思っていたのですが、21世紀のAIは理屈が立てられないまま実装できるようになってしまった。ここが大きく違うところです。
桐原 演繹的に学習していたものが、膨大なビッグデータを経験のように帰納的に学習できるようになったわけですね。
井上 英語学習に喩えると、これまでのAIは文法をきっちり学んで文法通りに話すみたいなことだったのですが、実際、ネイティブの習得方法はそんなものではなく、耳から入ってきたものを真似して習得していきますよね。無意識のうちに帰納的な法則を見出して聞いたり喋ったりしています。そうしたネイティブの習得の仕方に今のディープラーニングは近いのだと思います。理屈で説明できないとAIはつくれないという思い込みがあったのですが、それがデータさえ集めれば理屈抜きでもAIは学習できるようになった。まるで「経験こそ力だ」という人生訓みたいなオチではありますが。(終)
