半導体から読み解く現代テクノロジー入門
第2回:トランジスタとは何か?0と1が社会を動かす仕組み

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Author 伊藤 要介
IT批評編集部

私たちの使うスマートフォンやパソコン、そしてAIまで、根っこを辿れば「0と1」で動いています。この「0と1」の世界を物理的に実現しているのがトランジスタです。前回はトランジスタが電気の”蛇口“のような働きをしていることを紹介しましたが、今回はその仕組みがどのように「論理」や「思考」につながっていくのかを解説していこうと思います。

目次

トランジスタと論理ゲート(AND ,OR ,NOT)

トランジスタを複数組み合わせると、論理ゲート(Logic Gate)と言う条件に応じて答えを出す装置を作ることができます。論理ゲートは、コンピュータの「思考の単位」のようなもので、文章(処理)を組み立てるのに単語の意味(出力ルール)を理解することが重要になります。

代表的な論理ゲートには以下のようなものがあります。

代表的な論理ゲート

ANDゲート

入力A 入力B 出力
0 0 0
0 1 0
1 0 0
1 1 1

ANDゲートは入力値全てが1の時に1が出力される

ORゲート

入力A 入力B 出力
0 0 0
0 1 1
1 0 1
1 1 1

ORゲートは入力値のどれかひとつでも1の時に1が出力される

NOTゲート

入力A 出力
0 1
1 0

NOTゲートは入力値と逆の値が出力される

0が入力された時は1、1が入力された時は0が出力される

NANDゲート

入力A 入力B 出力
0 0 1
0 1 1
1 0 1
1 1 0

NANDゲートはANDゲートの次にNOTゲートがついている状態なので、ANDゲートと逆の出力がされる

入力値全てが1の時に0が出力され、入力値のどれかひとつでも0が入力された時は1が出力される

NORゲート

入力A 入力B 出力
0 0 1
0 1 0
1 0 0
1 1 0

NORゲートはORゲートの次にNOTゲートがついている状態なので、ORゲートと逆の出力がされる

入力値全てが0の時に1が出力され、入力値のどれかひとつでも1が入力された時は0が出力される

XORゲート

入力A 入力B 出力
0 0 0
0 1 1
1 0 1
1 1 0

XORゲートはeXclusive ORゲートの略称です。排他的論理和回路や不一致回路とも呼ばれ、入力値が異なった時に1が出力がされる

片方の入力値がもう片方と異なった時に1が出力される

XNORゲート

入力A 入力B 出力
0 0 1
0 1 0
1 0 0
1 1 1

XNORゲートは一致回路とも呼ばれ、入力値が同じ時に1が出力がされる

片方の入力値がもう片方と同じ時に1が出力される

このようなルールの組み合わせにより、コンピューターは

  • 数を比べる
  • 計算する
  • 条件に応じた分岐を行う

といった「判断」を実現しています。

つまり論理ゲートとは条件に合うかどうかで「成立」や「却下」決めるルールに従って決定を下しているのです。

集積回路の誕生(IC→LSI→VLSI)

トランジスタと論理ゲートによって「0と1で判断する装置」が生まれたことで、次に求められたのは、それらをいかに効率よく組み合わせるかでした。数十個の論理ゲートを手作業でつなぐのは、非効率で拡張性に乏しかったからです。

この課題を解決したのが「IC(Integrated Circuit=集積回路)」の発明です。複数のトランジスタや抵抗、コンデンサなどを1枚のチップ上にまとめて“焼き込む”ことで、部品数が大幅に削減され、設計・製造が飛躍的に効率化されました。

1971年に登場したインテルのマイクロプロセッサ「Intel 4004」は、わずか1つのICチップに約2,300個のトランジスタを搭載しており、これが「頭脳を持つシリコン」の幕開けとも言える画期的な出来事でした。

このようにしてIC技術は進化を続け、やがて数千〜数万個のトランジスタを搭載する「LSI(Large Scale Integration)」、さらには数十万〜数億個にまで拡張された「VLSI(Very Large Scale Integration)」へと発展していきます。

  • IC(Integrated Circuit):集積回路(数個〜数百個のトランジスタ)
  • LSI(Large Scale Integration):大規模集積回路(数千〜数万個のトランジスタ)
  • VLSI(Very Large Scale Integration):超大規模集積回路(数十万〜数億個のトランジスタ)

この進化により、コンピュータのサイズは劇的に小型化し、コストも削減。スマートフォンやノートPCに搭載されるCPUは、まさにVLSIの代表例です。つまりICは、コンピュータの「知能」を小さなチップに凝縮した技術革命であり、現代社会の基盤技術でもあるのです。

コンピュータはどう“考える”のか?

「コンピュータは考える」と聞くと、まるで人間のような知性を連想しがちですが、実際には極めて論理的な判断装置です。与えられた情報を処理し、一定のルールに従って結論を出すという意味で、コンピュータは“考えて”います。

この「考える」という動作は、大きく4つのプロセスで構成されます。

  • 入力: 外部から情報を受け取る(例:キーボード、マウス、センサー)
  • 演算: 受け取った情報をもとに計算や判断を行う
  • 記憶: 必要な情報を一時的・または長期的に保存する
  • 出力: 計算結果や判断結果を画面や音声などで伝える

この一連の処理はすべて、トランジスタで構成された論理ゲートの「0か1か」の組み合わせによって実現されています。

たとえば、Aという入力が1で、Bという入力が0のときに処理を分岐する「IF文(もし〜ならば〜)」のような判断も、AND・OR・NOTといった論理ゲートを組み合わせれば再現できます。

こうした単純なルールを無数に組み合わせることで、コンピュータは「どちらが大きいか」「条件を満たしているか」といった数値比較や命令選択、さらにはAIのような複雑な判断までも実行できるようになります。

こうした処理の中心を担っているのがCPU(中央処理装置)です。CPUは、何億個ものトランジスタが集積された超高密度な回路であり、1秒間に数十億回もの演算を行う、まさにコンピュータの“司令塔”です。

この「判断の組み合わせ」を一つのチップに大量に詰め込むために、ICからLSI、そしてVLSIへと技術は進化しました。

初期のICには数十〜数百個のトランジスタしか入っていませんでしたが、現代のVLSIでは数十億個が収められています。つまり、“脳の神経細胞”にあたる回路が爆発的に増えたのです。

これにより、コンピュータは複数の条件を瞬時に判断し、膨大な情報を同時並行で処理できるようになりました。

スマートフォンでの顔認証、音声アシスタント、自動翻訳といった機能は、まさにこの“電子の脳”が毎秒数十億回の判断を下しているからこそ可能なのです。

では、こうした判断能力を持つ装置が、私たちが目や耳で感じる「画像」「音声」「動画」などをどのように理解しているのでしょうか? 次は、コンピュータが“意味”をどう捉えているのかを見ていきます。

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