LA(Learning Analytics)で学びをつなげる
京都大学学術情報メディアセンター教授 緒方広明氏に聞く(2)

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聞き手 都築 正明
IT批評編集部

AIが個々に応じた学習方法を提案することで、履修主義から習得主義に

現在、各地方公共団体の教員不足は深刻です。2000年代に教員の多くを占めていた団塊世代の大量退職を非正規教員で埋め合わせたことで教員が多忙化して、その状況が広く知られたことで、教員を志望する学生が少なくなってしまいました。その結果、教員採用試験の倍率も下がり、教育の質的担保も難しくなっています。

緒方 教員の負担を軽減することも、LAの大きな目的です。これまでは、授業で用いるテストについても事前に準備して配布し、回収したものを添削して誤答の多かったものを次の授業で教える必要がありました。LAのシステムを使えば、タブレットにスタイラスペンで直接解答させて、リアルタイムに分析してその場で説明することができます。一連の準備や手間を省くことができるだけでなく、学習内容を定着させるうえでも効果的です。また、ベテランの先生の経験やカンに頼っていたことを若い先生に共有することもできます。データとシステムを用いることで、現在の教員が抱える負担を約20%は縮減できます。

教員不足を受けて、40人学級が見直されていますが、LAによって個別最適化が行われれば、その実現を後押しすることができますね。

緒方 学習状況をその場で見て取ることができれば、可能になることも多くなります。

飛び級や留年といった大きな制度改革は難しくとも、履修主義から習得主義に近づけることは可能ですよね。

緒方 AIが個々に応じた学習方法や課題の克服を提案できるようになれば、今よりも課題を克服しやすくなるはずですし、学習内容を充実させることができます。なにより、子どもが理解できないのにただ授業に出ているという苦痛をおぼえることはなくなります

教育にかかわる、それぞれの立場の当事者意識も必要ですね。

緒方 保護者にとっても子どもの学習状況をリアルタイムで知るメリットがあります。大学や研究機関は教育ビッグデータを用いた研究をすることができますし、国や教育委員会もEBPM(Evidence-Based Policy Making:エビデンスに基づいた政策立案)を実施することができます。

産業界においても、自分たちの役に立つ人材を要請するだけに留まらない役割が求められますね。

緒方 やはり産・学・官が連携して進める必要があります。実際に文部科学省の調査研究協力者会議の「教育データの利活用に関する有識者会議」メンバーとして私たちの取り組みを紹介していますが、みなさん興味を持ってくださっています。また2021年に「エビデンス駆動型教育研究協議会」を立ち上げてLEAFをさまざまな教育機関に導入して教育データの利活用やLAの研究や促進を進めるほか、データの標準化や基盤システムの構築について議論を深めています。

学校は地域にも説明責任を負っていますが、エビデンスをもって説明責任を示すことで、学校評議会やコミュニティ・スクールが拡大することも期待できそうです。

緒方 そうした活用のしかたも考えられますね。

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