データとエビデンスで教育を変える ― LA(Learning Analytics)の視点から
京都大学学術情報メディアセンター教授 緒方広明氏に聞く(1)
学びのプロセスを可視化する
先生の開発されたLEAF(Learning and Evidence Analytics Framework)は、どのように構成されているのでしょうか。
緒方 学習者の課題提出や成績管理を行うLMS(Learning Management System:学習管理システム)、デジタル教材配信システム「BookRoll」、学習データを分析するツール「ログパレ(LOG PALETTE)」、学習履歴データベース(LRS)で構成されています。
LMSは、既存のeラーニングプラットフォームと連携させることもできますか。
緒方 LTI(Learning Tools Interoperability)に準拠しているので、MoodleやCanvasをはじめ「学習eポータル」対応の各サービスに連携することができます。実証校では主にMoodleを利用しています。
学習のスキームはどうなるのでしょう。
緒方 まず、LMSでコース作成や参加者登録、教材の登録などの授業計画を行います。教材は「BookRoll」で配信され、学習者はマーカーやメモなどを使いつつ学習を進めるほか、必要に応じてクイズに解答したり「DicoDico」という辞書機能を使ったりします。これらの学習活動は「ログパレ」に記録され、全体および個々の学習状況を把握・分析することができます。
「BookRoll」に使われる教材というのは、独自のものでしょうか。
緒方 紙ではなくPDF形式ですが、学校でつかわれている教科書と同じです。ただし、すべての教科書をカバーできるわけではありません。授業のみで使うのであれば教育活動として著作権法上の例外として複製できるのですが、それを家庭でも閲覧するとなると、同条件で用いることは難しいです。独自の教材などは問題なくつかうことができますし、大学の授業はほとんどPowerPointが使われているので問題なく移行することができます。
保護者の方々にもそれが提供されると、学校だけでなく家庭との連携もとりやすくなりそうです。
緒方 従来の紙ベースでのやりとりだと、渡したままになってしまうこともありえますが、そうした懸念はなくなると思います。
「知識・技能」のほかに「意欲」「関心」「態度」といった定量化できない評価を含む観点別評価についても賛否がありますが、LAを活用することで子どもの学びのプロセスを客観的にみることができそうです。
緒方 おっしゃるとおりです。学校の先生の話を聞くと、そうした評価については先生たちも頭を悩ませているそうです。授業中はおとなしいけれど能力や関心が高い子どももいますから、こうした子どもの学びの芽を育ててあげたいですね。
学習者の学習ポートフォリオのようなものができると、転校したり、長期欠席や不登校の子どもを学力面でケアすることも可能になりますか。
緒方 そうしたことも考えられると思います。将来的には、フリースクールや予備校、チューター制度を含めた学校バウチャー制度なども構想しやすくなるでしょう。学びのさまざまな選択肢が増えるだろうと思います。
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