私たちはいかなる進化の途上にいるのか――心・意識・自由意志をめぐる問い
第4回 自由意志と哲学への問い
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2025.03.27
著者
都築 正明
IT批評編集部
デネットというツールボックス
平たくいえば、人間は物質的なものだが、自由意志があるようにふるまう“道徳的行為者クラブ”に属することで自己利益が満たされるし、進化の突端にいる私たちは来たるべき別様なものを知り得ないのだから、それでよいではないかというデネットの主張は、共時的な首尾一貫性を求める典型的哲学者の視点からは、日和見的な態度のように映る。
役に立つのだからよいではないかというデネットの言論は、しばしばツールボックスに例えられる。
彼の考案した直感ポンプ――スカイクレーンとスカイフック、CwC(Competence without Comprehension:理解力なき有能性)、浮遊理由……ここには“〇〇イズム”に留まらない思考のツールが横溢している。
彼は、クオリアをめぐる論争においてネッド・ブロックが冗談まじりに彼自身の“つかみどころのなさ”――カルーゾ―のいう“ウナギ性”――を批判して挙げた、ルイ・アームストロングへのインタビューの逸話ーー「ジャズとはなにですか」「そんな質問をしているようでは一生わからないようなものさ」ーーを大変気に入っていたようだ。
『「意識」を語る』(山形浩生他訳/NTT出版)においてスーザン・ブラックモアに「哲学とはなんですか」と聞かれ「哲学とは、何を聞くべきかわからないときにするものだよ」と答えている。
ともあれ、物故したいまでは、もはや彼に何かを問うことができないことは、残念なところである。
スーザン・ブラックモア (著)
山形 浩生, 守岡 桜 (翻訳)
NHK出版
ISBN:978-4757160170
