AIは「意識」をもつのか?
第2回 AIにも適用できる可能性がある「意識の統合情報理論」とは?

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聞き手 松下 安武
科学ライター・編集者。大学では応用物理学を専攻。20年以上にわたり、科学全般について取材してきた。特に興味のある分野は物理学、宇宙、生命の起源、意識など。

情報統合理論の傍証

統合情報理論はまだ検証が十分になされていない仮説段階の理論である。ただし、いくつかの実験的な傍証は存在している。統合情報量を直接計算したり、測定したりするのは極めて困難なため、そのような実験では、「脳に刺激を与えたときに、その影響が脳の中をどう伝わっていくか」が調べられている。統合情報量が高いシステムは、一か所に与えた刺激が様々な領域に複雑な形状になって伝わっていくと予想されるからだ(図2-1~図2-3参照)。

ある実験では、覚醒時と睡眠時に電磁石で脳の一部に磁気刺激を与えて、その後の脳の反応が調べられた1。これは「経頭蓋磁気刺激(TMS)」と呼ばれるもので、うつ病の治療などにも使われている。

実験の結果、覚醒時は磁気刺激の影響が脳の広範な領域に広がっていき、0.3秒ほどそれが持続した。一方でノンレム睡眠時は、磁気刺激の影響はあまり脳内に広がっていかず、0.1秒程度で活動が収まった。なお、ノンレム睡眠(眼球の急速な運動を伴わない睡眠)とは、深い眠りに当たり、夢は見ていない、もしくは夢を見ていたとしても不明瞭なものだとされる。

以上の実験の結果は、ノンレム睡眠時は脳内の領域どうしの情報のやり取りが弱まっていること、つまり「統合されていない」ことを示唆しており、統合情報理論を支持するものだとみなされている。同様の実験は麻酔状態や植物状態の被験者でも行われており2、統合情報量理論を支持する結果が得られている。

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