勅使川原 真衣氏に聞く
第4回 「能力」の呪縛を解く鍵とは
本当にできる人はケアをできる
いまだにリーダーシップとかマネジメントの正義感たるやすごいですもんね。実は能力主義を信奉するのも理解できるところもあって、門閥や身分じゃない実力の良さみたいなことを否定しきれない部分があって、それがなくなると自己否定みたいになってしまう。
勅使川原 それでもいいと思うし、それが事実かもしれないんですけど、その能力の軸とは違う別のベクトルで評価して「も」いいんじゃないのということを言っているわけです。いてくれてるだけで、和む人とか。
能力主義を信奉する人たちをほぐすにはどうしたらいいのでしょうか。
勅使川原 難しいですね。優越感はなかなか手放すことはできませんから。「本当にできる人は」という言い方をあえてしますけど、できる人はやっぱりケアをできる人なんだ、ケアしないで能力主義で進めていくのは稚拙なんだとかダサいんだっていうことを思ってもらうぐらいしか思い浮かばないですね。
そういう意味で言うと、勅使川原さんのお仕事みたいに視野を広げることを1回経験しないとダメでしょうね。誰もリーダーシップもマネジメントも疑ってないですもんね。
勅使川原 本当にそうだと思います。それを人口減少、人手不足社会で本当にやれると思っているのか、ちょっと疑問ですけどね。
優秀なビジネスマンの人たちにドラッカーの否定なんてしようものならすごく怒られますけど、わたしからすると、ドラッカーにしてもシュンペーターにしても、お金儲けのために何がいちばん効率的かを言ってきた人たちに思えます。そうなると、みんなが興味を示すのは、人の幸福よりもどう競争に勝つかですよね。
勅使川原 そうです。
でもわかりやすいレースとわかりやすいゴールがある限りは、能力主義を疑うのはなかなか難しそうです。
勅使川原 そうなんですね。わかりやすいことが良いことのままだったら、もう絶対変わらないですね。組織における人の組み合わせが大事なんだと提唱してますけど、変数が多すぎてわかりにくいんですよ。わかりやすさを求めたら個々人の能力を測定する方向に行ってしまう。
本に登場されている人たちみたいに、ある会社では全然うまくいかないけど、他の会社に行くとエリートになったり、逆のケースもあったりする。それって普通にありそうなことですが、そこには目がいかないんでしょうか。
勅使川原 いま評価されていて、しかも組織の上層部にいる人というのは、大きな失敗をしていない人が多いですよね。なので、自分の能力のおかげで、単線的に右肩上がりに成長してきたというふうに思いがちなのかなと思うんです。逆に私に依頼してくださる方は、ご家族の介護の経験がある方やお子さんが障害児だとかいう方が本当に多いんですよ。ご自身が大病をされていると、人間というのは単線的に拡大していくことだけが成長じゃないんだっていうこと、人生にはままならないことがあるということが身に染みている方はご一緒できることが多いです。
いずれ自分も衰えるということも本当は想像しなきゃいけないでしょうけど、でも、想像しない人たちが老害になっているのかもしれません。「俺は傷ついたことがない」と言える人は、この先も未来永劫、強さが続いていくってどうして思えるのかすごい不思議ですね。
勅使川原 想像力が1番のポイントになるでしょうね。