生成AIが加速する戦時下的状況としての現代
読売新聞とNTTの共同提言についてクロサカタツヤ氏に聞く(1)
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2024.05.28
聞き手
桐原 永叔
IT批評編集長

2024年4月8日、読売新聞とNTTが「生成AIのあり方に関する共同提言」を発表した。日本を代表する巨大メディアとテックジャイアントの組み合わせによる提言は海外でも大きな反響を呼んだ。そこには、生成AI時代における人間の危機と克服すべき課題が踏み込んだ表現で書かれていた。なぜこのタイミングでこの両者が提言を出したのか。その背景と意味について、仲介役となり提言を取りまとめる事務局を務めた慶應義塾大学のクロサカタツヤ氏に話を訊いた。

クロサカ タツヤ
株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。三菱総合研究所を経て、2008年に株式会社企を設立。通信・放送セクターの経営戦略や事業開発などのコンサルティングを行うほか、総務省、経済産業省、OECD(経済協力開発機構)などの政府委員を務め、政策立案を支援。2016年からは慶應義塾大学大学院特任准教授を兼務。著書に『5Gでビジネスはどう変わるのか』(日経BP)。その他連載・講演等多数。
目次
- 「生成AIのあり方に関する共同提言」とは
- なぜ読売新聞とNTTは生成AIについての議論を始めたのか
- 自信たっぷりに嘘をつく生成AIをいかに御していくか
- インベンションにおける変化のスピードを誰も想定できていなかった
「生成AIのあり方に関する共同提言」とは
生成AIに関する基本的な現状認識
生成AIは人間にとって使いやすいインターフェースやエクスペリエンスを備え、労働生産性の向上が期待される一方、正確性には課題が残ります。無制限な利用は社会的リスクも孕むため、技術・制度の両面で規律と活用を両立する必要があります。
主要論点
- AI×AE(アテンション・エコノミー)の暴走への対峙
- 自由と尊厳を守るための言論空間確保に向けた法規制と技術導入
- 法整備を含めた実効的な統治(ガバナンス)の確立
今後の見通し
- 生成AIはイノベーションの段階に入りつつある。
- 選挙・安全保障分野では強い制限が必要であり、直ちに対策を講じるべきである。
- 著作権法の適正化と生成AI活用の両立を、制度と技術の両面で進める必要がある。
- ①共同規制の導入、②実効的技術の確立と普及、③法改正への取り組み、の段階を踏む。
- 個人の自律的な自由と尊厳を最重要の価値とし、コミュニティの視点からも検証を進める。
- 読売新聞とNTTは引き続き検討と提言を行う。
(出典:読売新聞ニュースリリース 2024年4月8日)