勅使川原 真衣氏に聞く
第3回 「答え」の追求がもたらす現代の矛盾
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2024.12.25
聞き手
桐原 永叔
IT批評編集長
組織や能力の科学化は本当は難しい
勅使川原 余談かもしれないですけど、昨日、たまたまある僧侶とお話ししたときに、「指月(しがつ)」という、月を指差したときにわたしたちは指に気を取られすぎて、その指し示している先の月の存在をないがしろにしてきたというか、着目しないできてしまったんじゃないかみたいなことをお話されてて、本当に我が意を得たりという思いでした。「能力」そのものについても、指先にあるような小さいことを分解すればするほど理解した気になってしまっている。「分ける」がわかるのを語源だとしたときに、分けすぎてわかんなくなっているということに気づいてないです。
組織も全体関係ですから、包括的にしか理解できないものってたくさんありますよね。
勅使川原 そうです。組織もその時々に揺れ動く状態として捉えなければなりません。その意味では、科学的な分析って必ず状態を固定しないといけないので、組織や能力の科学化は、本当は難しいと思っておかないといけないんですよね。
本当ですね。でも、AIを社会で活用しようと思うと、どんどん固定化する方向に行きがちです。今お話をお聞きしながら、「暗黙知」を唱えたマイケル・ポランニーのことを思い出していました。人なんか分解したってわかるわけなくて、言葉にはできない能力があってという。今いろんな企業で、日本の製造業現場にある熟練作業者の 暗黙知をデータ化しようという動きがあります。それ自体は必要なことだと思うのですが、果たしてできるんだろうかと思ったり、データ化できないところに人の仕事の能力の本質があるんじゃないかと思ったりしています。