NTTテクノクロス・大野 健彦氏に聞く
第5回 人間を中心に据えてテクノロジーを考える

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

人間を中心に据えてデザインを考える

桐原 最初に人工知能を意識するようになったのはいつぐらいですか。

大野 1990年か91年ごろで、いわゆる知識処理の時代ですね。第5世代コンピュータがそろそろ一区切りする頃です。

桐原 当時は、研究分野としての人気はどうだったんでしょう。

大野 情報系のなかではもちろん人気はあったと思います。大学にも著名なAIの先生はいらっしゃいましたし、いくつかの冬の時代に比べればはるかに活発に研究はされていたふうに思いますね。その当時は、認知科学とAIの距離が今ほど広くはなくて、割と融合しながらやっていた感じがします。そういう意味で、ブームではないかもしれないけど、非常にエキサイティングでした。今の生成AIはもう認知科学とはかけ離れたところに行ってしまった印象があります。

桐原 その後、NTTに入社されるのですね。

大野 当時の基礎研究所というところで、認知科学の研究をやっている部署がありまして、人間のあり方と、コンピュータはどうあるべきかみたいなことをずっと研究したんですね。それから、ユーザビリティの研究もやったりしていて、その後、紆余曲折があって他部署に異動していたのですが、NTTのサービスを俯瞰してみると、技術はすごいんだけど、それがユーザーにどこまで役立っているのか、若干疑問を持っていました。一方で、Appleとか見ると、いいものをどんどんつくっているイメージがあって、この違いはなんだろうと。

桐原 そこからデザインの研究に行かれるわけですね。

大野 研究所に戻るときに、デザインの研究をやりたいと言って、研究テーマを立ちあげることから始めました。その後、当時のNTTアイティという会社で、自分たちで稼ぎますから研究所の成果を活用する部署をつくらせてくださいとお願いして、2014年に部署をつくり、今に至るという感じです。

桐原 その部署というのが、「こころを動かすデザイン室」ということですね。

大野 人間を中心に据えるというところは、ぶれないでやってきたかなと思っています。

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