NTTテクノクロス・大野 健彦氏に聞く
第3回 データ至上主義から人とAIの協働へ
人間を主軸にテクノロジーを考える
桐原 先ほど話にでた北欧におけるITの取り組みについてもう少し詳しくお話しいただけますか。
大野 最近のAIとの整合性については不勉強なのですが、端的に言って、使う人が使いたくなるシステムをちゃんとつくることに尽きると思っています。電子政府のシステムの話はよく出てくる事例ですけれど、それ以外にも街づくりもそういう意識で取り組んでいます。例えばデンマークの首都であるコペンハーゲンではCO2を削減するために車から自転車にモーダルシフトをしています。その進め方が、いきなり政策がどんと出てくるわけではなくて、そこに住む市民をデザインプロセスに巻き込んで、プロトタイプと検証を重ねながら、一種のアジャイルのアプローチに近いと思うんですけど、つくっていって、気がつくと政策が実現しています。自転車専用の道路を整備する、信号を自転車優先にする、市長が率先して自転車通勤をするなどの活動に取り組み、今では、20キロぐらいまでは自転車通勤が一般的です。車に乗るより早く着くし、健康的だし、向こうは夏は暑くないんですね。政策立案と実行において、人間中心の考え方があるイメージです。
桐原 以前に「IT批評」で取材した吉村有司先生が取り組まれていた、バルセロナ都市計画でのウオーカブルシティの話もまさにそうですね。
大野 私もニュースで見て感銘を受けたんですけれど、ヨーロッパにはシステムをつくるのは人間がだという考え方が非常に強い。
桐原 一方で、アメリカはテクノロジーが社会をつくるという意識が強いように感じます。
大野 ヨーロッパはテクノロジーも大事だけれど、人間が社会をつくるという基盤がある。人間があくまでセンターにあるという考え方が非常に強いですね。逆にGAFAMは、テクノロジーが社会をつくる式の考え方。
桐原 実は今日の取材は、どちらかというと、テクノロジーやAIが現場をどう変えていくのかというお話になるのかと思っていました。製造現場に眠っているデータという財産を活かして、どう製造業がトランスフォーメーションしていくのかを、テクノロジーを主語にしてお話しくださると思っていたのですが、あくまで人間を主軸に考えるというスタンスなのですね。
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