NTTテクノクロス・大野 健彦氏に聞く
第2回 社内のナレッジを有効に引き出すために
AI化を阻む社内ドキュメントに潜む問題
桐原 ここまでのお話を伺うと、AIやテクノロジーの出番はなくて、人間的というかアナログな手法なんですね。
大野 そうです。ここまではどうやって暗黙知を抽出するのかという話で、そこまでをプロセス化しました。生成AIが登場するのはアウトプットの場面になります。
桐原 さまざまな企業で活用されそうですね。
大野 いろいろな業種の方とやらせていただいております。通信インフラのメンテナンスの技能もありますし、組織マネジメントでもやらせていただいております。
桐原 ライオンさんでの取り組みについて教えてください。どういうきっかけで始まったのですか。
大野 NTTデータとライオンとで、技能を抽出して生成AIを活用してアウトプットするというプロジェクトをやろうという時に、われわれにお声がかかりました。
桐原 ライオンさんの目的は、ベテランの職人さんがいなくなるみたいなことですか。
大野 そうではなくて、現場に暗黙知がたくさんあって、それからドキュメントもたくさんあって、これはもうあらゆる日本の現場も同じですけど、そういう情報はたくさんあるんですけど、それらをうまく活用したい。生成AIおよびITの力を使ってなんとかしていきたいというのが動機だと思います。
桐原 なるほど。RAGやローカルLLMの活用が叫ばれながら、実は社内にあるナレッジが全然データ化されていない現状があるなかで、どういう活動が行われているんだろうと興味を持っていました。
大野 一般に、暗黙知の抽出以前に、社内ドキュメントですらかなり問題があると思っています。弊社のケースですが、読み手視点で書かれていない。書き手視点で書かれているドキュメントがほとんどなのです。たとえば業務マニュアルも、手順は確かに書いてあるんですけれど、読んでも頭にすっと入ってこない。読み手の理解よりは正確性を重視した作り手側の目線で書かれるケースが非常に多い。他のドキュメントも同様で、たとえばプロジェクトの記録も、本人たちの記録用であって、後から読む人が再利用することを想定して作成することが一般的には少ないですね。
桐原 生成AIにそうしたドキュメントを読ませても意味がないということですか。
大野 いくら生成AIに放り込んでも、まったくわけのわからないものが出てきてしまいます。元の文章に戻っても、なんだかよくわからないっていうケースになりがちだなと感じています。