NTTテクノクロス・大野 健彦氏に聞く
第2回 社内のナレッジを有効に引き出すために
マニュアル化が困難なスキルもある
桐原 熟達者が持つスキル、暗黙知も含めてですが、これはある程度分類できるのですか。
大野 ベテランと呼ばれる人たちはどういうスキルをお持ちかというと、専門業務に関する専門知識、ここでは「テクニカルスキル」と言って、一般的にはここに注目されがちなんですが、われわれが業務をやるときにはこれだけでは進まなくて、たいていは対人折衝が発生しますので、「ヒューマンスキル」が非常に重要になってきます。もうひとつは「コンセプチュアルスキル」と言われて、これはもう課題解決能力と呼んでいいんじゃないかなと思っていまして、もちろん非常に大事で、この3つが基本的には重要なスキルだなと考えております。この3つをある程度バランス取って抽出する必要があると考えています。

熟達者の持つスキル
大野 実際に出てきた技能を分類したのが下の表です。結構業務のなかでよく出てくるのが大体この右側6つで、実は右になればなるほど伝承が難しいんですね。実際のお話を伺うと、段取りが重要であったりとか、馬鹿にならないのが心構えのところでして、しばらく熟達者にインタビューをしていると、心構えの判断になってくることが非常に多いです。一見精神論っぽく聞こえるんですけれど、これは一種のマインドセットの話で、これも非常に重要な要素であると考えています。この辺は、昔は本当にOJTで長い時間をかけて先輩の背中からじわじわ伝わってきたところなんですが。

抽出される技能の種類
桐原 最近はOJT期間が短縮されたりとか、テレワークが普及したりして、先輩の姿を見ながら仕事をする機会が減っています。
大野 タバコ部屋文化とか飲み会文化も衰退してきて、顔を合わせる機会が減っています。さらに、グループ内で別会社になってしまうケースが非常に多くて、ひとつの会社だったのが受発注の関係になってしまうと、技能継承が起きにくいということが、あらゆる現場で起きている問題です。
桐原 少し前に、モジュール化や分業化が盛んに言われていましたが、実は日本が得意なのは、アラインメントや擦り合わせですよね。それをデータに残していこうという試みですね。
大野 いわゆるデカルト型の還元論的な手法の、すべてを分割して1人がかかわる範囲を小さくすることによって業務を効率化させるというアプローチに対するアンチテーゼとして、見直されているかと思います。分業分業ではなくて、みんなでどうやって現場を回していくかが見直されています。