経済学者・井上智洋氏インタビュー(3)
「頭脳資本主義」の時代をいかに生きるか?

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

大企業がハマった罠:アライメントがモジュール化を阻む

井上 これも2016年頃ですが、うちの大学から何人も大手銀行に採用されました。教員としてはありがたいですが、「これからAIの時代だっていうのにそんなに人を雇って大丈夫なのかな?」と心配になった。そうしたら、3年ぐらい経ってからようやくのこと、大手銀行が軒並み行員を減らすと言いだしました。大きな企業ほど慣性の法則が働いて方針転換しにくいのかもしれませんが、それが日本企業の大きな弱点だなと思います。

桐原 日本のものづくりにはさらに厳しい局面が待っていると予想されていますね。

井上 工業製品のコモディティ化が進みました。パソコンでも家電製品でもモジュールを組み合わせれば簡単につくれるようになりました。モジュールになっていれば全体を調整しながら組み立てる技術は不要になります。それで、発展途上国でも組立が可能になり、日本の製造業は軒並みダメになってしまいました。最後の聖域として残されていたのが自動車です。ガソリンエンジンの車の製造ではすり合わせ技術というんですが、部品同士の相互の影響を複雑に考慮しながらつくらなければならないから、いまだに組み立てには高い技術が必要です。ところが電気自動車になれば、部品の数も少なくなり組み立て自体もブロックを組み立てるみたいに簡単になります。シリコンバレーのベンチャー企業や台湾の小さな会社が自動車をつくることが可能になるので、トヨタや日産が車を作る必然性みたいのものが失われていくでしょう。

桐原 象徴的な話ですね。日本の企業では経営もアライメント(調整)が大事で、各部署ですり合わせて有機的に結合しましょうということでやってきたから、この部署が不要だからといってスパッと切り離すことができません。一部分を切り離してしまうと全体に影響が及ぶような仕組みになっているので、なかなか組織も変えられない。

井上 チームワークでみんなが有機的に結合してやっていく強みもあるのですが、オンラインには弱いですね。仕事の切り分けができていませんから。

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