共同購入、SNS活用、地域活性──グルーポン人気の裏側にあるビジネスモデルとは?
激安クーポンを販売する「グルーポン」が大人気の理由は?
地域活性まで視野に入れるグルーポン
これだけを見ると、イージーなビジネスのように見えるが実際は異なる。
一番重要なのが、クーポンに掲載する店舗選びだ。掲載する店舗に関しては、店舗側からのオファーを受け付けているほか、社内の専門チームが日々探しているという。口コミ、雑誌などで店舗を探し、掲載の基準を満たしているかをチェック。実際に足を運んで店舗の様子を伺うこともあるという。ITリテラシーの低い店舗の場合は、まずシステムの説明からすることも。かなり手間ひまをかけているという印象だ。
「お客様をがっかりさせてはいけない。ワクワクしてほしい。そのためにはクーポンのクオリティを高めることが一番。ゆえに、お店側と私たちの双方の信頼関係と協力が不可欠です。それ以外にも、毎日クーポンを発行する、発行したクーポンがその日のうちに使える、飲食以外にも美容やレジャー、エンターテインメントといったジャンルのクーポンを扱うことで、ワクワク感、ドキドキ感をもってもらえるように努力しています」
グルーポンには、ただ単純にクーポンを販売するという目的だけではなく、最終的には店舗と、店舗のある地域の活性化という目的もあるという。グルーポンの場合、クーポンを購入した人は、店舗に足を運んでサービスを受ける。そして店舗のサービスが気に入れば、リピーターになる。そのことにより、店舗も地域も活性化していくという考えだ。
「過去に掲載したクーポンは、グルーポンのサイトから見ることができます。
これは、ある意味シティガイド的な使い方ができます。たとえば、知らない土地に旅行する場合、ガイドブックを購入する人が多いと思います。それらは参考にはなりますが、ほとんどがお金を払って掲載してもらっているところばかり。しかし我々のクーポンは、我々が厳選したお店が掲載されています。お店側が掲載料を払っているわけではありませんので、グルーポンの信用とブランドの元に選ばれたお店が見られるというわけです」
確かにグルーポンのサイトには、過去のクーポンが見られるメニューがある。当初、これは単なる「これまでこんなクーポンを扱ってきました」という紹が目的のものかと思っていたが、実際にはかなり深い意図があって掲載されているということがわかった。
IT系サービスでありながら女性に支持されている
共同購入クーポンサイトは、日本ではまだ始まって日が浅い業種だ。このサービスを世界で初めて開始した米グルーポンも、創業2年あまりと若い企業。しかし、アメリカではすでにグルーポンはブランド化している。日本以上にツイッターをはじめ、Facebookなどのソーシャルネットワークが発達しているためか、情報伝播力が速く、瞬く間に浸透していったようだ。
すでに米グルーポンでは、一度掲載された店舗から、「もう一度掲載して欲しい」という要望が多いそうだ。グルーポンに掲載されることが、一種のステータスとなっているのだ。現在、新規にクーポン掲載の申し込みをしても、実際に掲載されるのは3カ月から半年先という状況だという。
日本ではまだそれほど掲載依頼はないものの、企業努力もあり日本の共同購入クーポンサイトではダントツの売上を誇る。
なお、ITを絡めたサービスでありながら、20代から30代前半の女性(F1層)に人気が高いのもグルーポンの特徴だ。ターゲットを女性にしたクーポン――ネイルサロンやエステ、フットアロマといった美容系やスイーツ系など――が多いこともあるが、他社に先駆けてモバイル対応に力を入れている点も挙げられる。
「携帯電話やiPhone、アンドロイドなどのスマートフォンにいち早く対応しました。これらが立ち上げ初期の頃からあったということも女性会員が多い要因だと思います」
ITを駆使したサービスというと、どうしても男性がメインと思いがちだが、通信販売などのeコマースは実は女性がメインターゲット。これはテレビ業界にも通じることで、ヒットさせたいと思うものは、若い女性、いわゆるF1層をターゲットにするのは定石。
グルーポンもその定石を外してはいない。
スピードだけではビジネスは成立しない。
最終的には「人と人」現在、グルーポンは、30エリアで毎日クーポンを発行しているが、これを継続していくのはなかなかたいへんなことだろう。結局のところ、掲載する店舗の決定、店舗とのクーポン内容の折衝、トラブルやクレームの対応などは、いくらITを使ったサービスとはいえ、最終的には人間が行わなければならないからだ。行き着くところは、グルーポンと店舗、グルーポンと顧客、店舗と顧客という、人と人との繋がりに集約される。
「インターネットを使ったサービスでありながら、密接に地域と連動しているというのがいいところだと思っています。グルーポンは単にクーポンを販売して終わりではなく、お客さんに足を運んでいただき楽しんでもらうサービスなので、実際にはお客さんとお店の関係になっていく。これが地域の活性化につながればいいと思います」
ツイッターを使ってのスピード感が重要な共同購入クーポンサイトだが、グルーポン、店舗、ユーザーの関係は時間をかけて熟成していくもの。現在、ツイッターを使って何かビジネスを始めようと考えている企業も多いだろうが、目先のスピードだけにとらわれずに、その後に続くゆっくりと、そして濃密な時間の流れにも眼を向けることができれば、何か新しいビジネスが生まれるかもしれない。グルーポンはその可能性を示してくれている。
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