経済学者・井上智洋氏インタビュー(1)
「中華未来主義」は誰にとってのディストピアか?
技術による社会変革を知らない世代:50代以上には気づけない危機
桐原 これはひとつには文系と理系の考え方の隔絶に原因があるようにも思います。ただ、AIがこれだけ普及してきて、両者が歩み寄りはじめたと感じるんですが。
井上 そうですね。私の教えている経済学部のゼミでも、サブゼミでAIのプログラミングを教えるよと言うと、ちゃんと人が集まるようになりましたから。さすがに文系といえども技術について学んでおかないと先がないということは、特に若い人は感じ始めていると思います。それは今の50代、60代との大きな違いです。彼らは、技術がそれほど大きく社会を変える体験をしてきていませんから。私は1970年ぐらいに第2次産業革命の余波が完全に消滅したと思っています。第2次産業革命というのは内燃機関と電気モーターがカギとなる技術ですから、自動車を購入して家電製品を揃えた時点で完結したのです。それ以降は技術が停滞して、未来への技術的な希望がなくなって、テクノロジーは自分たちの生活を変えてくれないだろうという失望と諦めが広がっていったのが1995年ぐらいまで続いていたと思います。95年にwindows95が出てインターネット時代が幕を開けましたが、その辺りからITを軸に技術が世の中を変えていくという資本主義が加速した時期だと捉えています。今はAIとかブロックチェーンとか5Gとか、毎年のように続々と新しい技術が出てきていますが、こんなことは70年代、80年代にはなかったことだと思うのです。
桐原 確かに私たちの世代は、テクノロジーの行き詰まりを感じていたのかもしれません。継続的な進化しか想像できないというような。それに公害といった社会問題もあったせいか、未来が薔薇色という想像はしなくなっていたと思います。映画『ブレードランナー』が82年、『ターミネーター』が84年で、そのぐらいからディストピアとしての未来が扱われるようになっていることからも、私たちの世代のテクノロジー観はできているかもしれません。
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