カタリナ マーケティングジャパンが展開する「クーポンネットワーク」
全国GMSのレジをタッチポイントに、コミュニケーションを実現するO2O
クーポンの集客力
リテーラーもカタリナ・ターゲット・メディアを活用している。そもそも全国37チェーン、5050店舗にもこのシステムが導入されている背景には、メーカーの販促のためのクーポンでも、それをきっかけに消費者が再来店するという、リテーラーにとって大きなメリットとなるその「集客力」がある。
2010年3月にシステムの導入を開始し、現在直営店とグルメシティあわせて300店舗以上にカタリナ・ターゲット・メディアを導入するダイエーは、店舗への再来店販促を目的とした施策を実施している。
ダイエーでは以前、再来店販促施策として、ハートポイントカードの優良上位会員向けに、値引きクーポンをDMで発送していた。だがこの施策は郵送費という大きなコストがかかるため費用対効果が高くなかった。
そこで、毎週日曜日しか利用しない顧客に対して平日に来店すると得をするクーポンの発券や、食料品しか買わない顧客に衣料品・生活用品を買うと得するクーポンの発券など、カタリナ・ターゲット・メディアを活用し、購買履歴ターゲットを絞ったさまざまな施策をとったところ、顧客の再来店頻度が明確に向上。導入以前と比較して、1人当たりの来店日数もアップした。レジ・クーポンならば郵送代がかからず、1人にアプローチするのにかかるコストは格段に下がった。
イオングループが集客に使ったのは、「わくわくデー」、「火曜市」、「お客さま感謝デー」などのイベント日の認知度アップだ。
その具体策は、たとえば「火曜市」に2000円以上の買い物をした顧客に、
さらに翌週の火曜日までに使える100円引きクーポンを発券し、そのクーポンを使ってまた2000円以上の買い物をすればさらに翌週の火曜日まで使えるクーポンを発券するといった施策。それを新店オープンから継続実施した結果、約半年後には火曜市の客数と客単価を、既存店なみに引き上げることに成功した。また、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」のロイヤリティを高めることを目的とした施策も実施している。
精緻なターゲティングの効果
「レジ・クーポンによるソリューションは単に『値引き券による販促』と捉えられがちですが、私たちの考え方は違います。レジ・クーポンはロイヤリティマーケティングツールになるのです。いかにブランドにとって親和性を持ってもらえるロイヤルカスタマーをつくっていくのか。そのひとつのツールとしてレジ・クーポンがあり、またO2Oのクーポンネットワークがあるのです」(澤井氏)というように、その日の購入データと過去の消費行動をすべて把握している時点で、他のどのメディアにも取ることができない詳細なターゲティングが可能であり、そのデータに基づいた質の高いマーケティングが可能なのである。
ウェブ上ではAmazon が実現しているマーケティングと近いことを、リアル
でカタリナが実現していると考えてもいいかもしれない。
また、想定購買者と実購買者のギャップを測ることにも有効だ。たとえば、想定購買者はF1女性だったが、レジ・クーポンで実購買者のデータをとると、想定よりも高齢の女性が多い、といったことが他の購買商品からわかってくる。
あるいは、高級外車に乗る高額所得者も、肉体労働者も、中高生も、コーラを購入する。それぞれのライフスタイルはまったく違うが、そのなかでも購買行動の共通項が見えてきてコーラ消費者に共通に響く訴求ポイントがわかってくる場合もある。このように、レジ・クーポンの利用結果をマーケティングや商品開発
にも生かすことができるというわけだ。
メディアとしての店舗活用
また、12年夏からは、メーカーやリテーラーによる商品値引きクーポンだけではなく、さまざまな企業がこのレジ・クーポンシステムを広告媒体として活用する展開も見えはじめた。
「プリンターをカラー化し、表現力が上がったことで、カタリナ・ターゲット・メディアは詳細なターゲティングができる非常に有効な屋外広告として使えるようになりました。簡単な例でいえば、自動車のディーラーが8人乗りミニバンの新発売にともない、フェアの告知と集客をしたいとします。ターゲットは大人数のファミリーですから、それに当てはまるであろう買い物をした顧客にクーポンを発券する。たとえば、幼児向け商品とお年寄り向け商品を購入した場合、おそらく三世帯で暮らす家族ですから、ミニバンの潜在顧客に当てはまりますね。その人たちに期間中の福引き券や来場者プレゼントなどを印刷したクーポンを配布する。すると効果が上がるわけです。
あるいはスポーツカーの販売キャンペーンなら、富裕層の男性単身者または若くて子どものいない夫婦がターゲットになります。たとえば高級ワインとトクホ(特定保健用食品)と黒毛和牛を買ったお客、というふうにターゲットを設定できるわけです」(澤井氏)
値引きクーポンでは配布エリアやリテーラーの指定ができないが、広告ではエリアや店舗の指定ができる仕組みになっている。地域の企業にとっては、すでに効果が出にくくなっているポスティングや新聞折込広告、地域フリーペーパーとさし代わる、非常に効果的なメディアになる可能性がありそうだ。
カタリナのO2O
そんなカタリナマーケティングのO2Oの試み、「クーポンネットワーク」が、カタリナ・ターゲット・メディアの一部としてどのように機能するのかを考えてみたい。
「次回買い物時に20円オフ」という従来のレジ・クーポンは、オフラインからオフラインのマーケティング手法であり、オンラインは介しない。それに対し、クーポンネットワークは、オンライン上のサイトで消費者が見たクーポンをプリントアウトし、店舗に足を運んで購入させるわけなので、純然たるO2Oである。
オンライン上で見つけたクーポンをプリントアウトして店舗に持っていくと、割引や値引きが受けられるというシンプルな仕掛けは、現状のO2Oモデルとしてはまさしく王道であろう。だが、そうは言っても成功者は「ぐるなび」や「ホットペッパー」などごく一握りである。これらは「いい店を見つけて、予約する」という必要に迫られたニーズを満たしながら、値引きやサービス券がついてくるという複数のメリットがある。
店舗側が自社のウェブサイトでそうしたクーポンを発行しているケースも多いが、SEO対策やウェブ広告に費用をかけられず、サイトが一般の人の目に触れにくい小規模のサイトでは、そもそもの顧客数が少ないうえに、すでにロイヤルカスタマーである顧客ばかりがクーポンを利用し、新規顧客の獲得や離反客の呼び戻しなどといった、本当の目的は果たせていないケースがほとんどだ。自力でクーポン型のO2Oを仕掛ける場合は、相当の顧客数と資金力が必須であろう。
クーポンネットワークは2012年12月時点では「まだ試験的に運営しており、仕様やシステムが固まり次第、ユーザーへの告知を積極的に行っていく」という段階であることもあり、一般への知名度はまだ低い。
O2O正否の3条件
では今後本格起動したとして、果たしてこのO2Oモデルは成功しうるのだろうか。
こうしたO2Oモデルが多数のユーザーに頻繁に利用されるためには、次のようなハードルをクリアする必要があるだろう。
- ① サイトが多くのユーザーに認知されている
- ② ラインナップが多数ある
- ③ 商品(クーポン)が魅力的である
O2Oモデルがなかなか成功しないのは、これらを同時に満たすことが難しいことにある。
まず①のいかにしてオンラインでサイトに集客するかだが、一般的にはこれが最も資金がかかり、難しいハードルだ。だがカタリナマーケティングにとっては、難しいことではない。
なぜなら、3 万台のレジを毎週6500万人が通過するというユーザーとの強力なタッチポイントがあるからだ。極端に言えばすべての顧客に告知をすることもできるが、まずは「レジでもらったクーポンを使って商品を安く買う」という消費行動に慣れたユーザーに、「たくさんの商品のクーポンが揃っています」という「クーポンネットワーク」を告知するクーポンを渡せばいい。しかもスーパーマーケットを普段使いで利用する顧客は週に何度もレジを通過するため、何度でもアプローチでき、刷り込み効果も出せる。
また、他のサイトからの導線として現在、日本最大級のチラシサイト「Shufoo!」(ユニークユーザー数401万人/月)、雑誌「サンキュ!」のクチコミサイト「口コミサンキュ!」( 88万人/月)との提携を結んでいる。今後、誘導施策を進めていく。
②のラインナップだが、前述の通りクーポンの総数は48クーポン(2012年12月22日時点)。自分が利用する店舗を選択するとここから減るため(たとえば筆者の選択した店舗では26クーポン)、楽天やヤフーオークションなどのサイトに慣れているユーザーには、多くは感じられないだろう。この数は今後どんどん増えていく予定だというが、1カテゴリーに対して1社独占の契約があるため、数百、数千というふうに爆発的に増えることはないはずだ。だが、「現状でも決して少ないとは思っていません。日本中で、いつものスーパーで1個単位から値引きが受けられるクーポンサイトはクーポンネットワークしかありません」と澤井氏は力説する。
③の商品の魅力は、個人の消費スタイルに左右される。たとえばある程度の収入があるひとり暮らし男性など、お金に余裕がある人にとっては、インターネットでサイトにアクセスし、10円20円引きのクーポンを選んで印刷して店に持っていく行動を、面倒だと感じる人が多いだろう。
しかし、特売チラシを毎日チェックして日々の生活費を少しでも抑えたいという主婦は多い。子どもの教育費や将来のための貯金をするためにコツコツとやりくりする主婦にとっては、その特売価格からさらに10円20円安くなるクーポンサイトは、とても魅力的に感じるはずである。
「店を出るときにもらうレジ・クーポンをチェックアウトクーポン、ウェブで探してプリントアウトするクーポンをチェックインクーポンといいますが、特性が違います。チェックアウトクーポンはもらうだけなので入手する手間はかかりませんが、自分の欲しくない商品のクーポンをもらってしまう可能性がある。一方、チェックインクーポンは手間はありますが、欲しいクーポンを自分で選ぶことができる。このそれぞれの特性を上手く組み合わせることで、ユーザーにとってより便利でお得になり、カタリナ・ターゲット・メディアは有力なマーケティングツールになるのです。さらに今後、スマートフォンを含むモバイル、ソーシャルメディア、Eメールなどのタッチポイントを利用していきます」(澤井氏)
その意味で、カタリナのO2Oはクーポンネットワークサイトに終わらない。
オフライン(店舗)で得たクーポンからオンラインに誘導され、チケットを持ってまた店舗へ戻る。そうした顧客に対して再びオンラインに誘導するアプローチも可能である。オフラインとオンラインが連鎖して消費者と深くつながっていく。そのプロセスのなかで、ロイヤルカスタマーがつくられる。
これが、これからの広告メディア、販促ツールの条件となってきそうだ。