ソーシャルメディアを論じる前に
② Web2.0からSNS時代まで、ネット社会の変遷をどう捉えるか
今後の動向:リアル空間との連動
トピックとして、リアル空間との連動について述べておきたい。既に述べたとおり、現在のソーシャルメディアの流行の背景には、いつでもどこでもテキストや写真をウェブに投稿できるようになったモバイル環境の発達がある。その瞬間ユーザーの周囲で起きていることをウェブの情報に変換する手間を、ユーザー自身が担ってくれることで、メディアのあり方や、情報の流通のあり方も変化するのではないかということが、これまでもたびたび語られてきた。
しかしながら、モバイルツールを手にしたユーザーが持つ情報のうち、あまり利用されていないが今後価値が高まると考えられるのは、「位置に関する情報」だろう。GPSの情報を取得して他のユーザーとコミュニケーションするサービスとしては、位置情報連動型SNSであるfoursquare や、「位置ゲー」として知られるサービス「コロプラ(コロニーな生活Plus)」がある。またGoogle Maps やマピオンの地図をマッシュアップした交通情報サービスなども、この範疇に入るだろう。
なぜ、位置情報が重要になると考えられるのか。その理由のひとつは、ソーシャルメディアによる人と人とのマッチングが実際の出会いを促す機能を果たし、そのことによって新たな「ご近所」を生むという手動型ソーシャルメディアの理念を現実のものにしていくのに、相手との位置関係を示す情報がとても役に立つということだ。自分の欲しいものを持っている人に出会えたものの、相手が遠方の人だったために受け渡しをあきらめた、という事態が回避できるだけでなく、直接相手に手渡しすることで感謝の気持ちをダイレクトに伝えられるというメリットもあるだろう。
またもうひとつの理由に、位置情報は刻一刻と変化するパラメーターであり、複数のユーザーの位置を把握しながら、ユーザー間の便利をはかるために
は、コンピューターによる自動処理が欠かせないから―言い換えれば、これまではあまりに煩雑で誰もわざわざそんなことをしようと思わなかった「多人数の位置情報をリアルタイム処理することで生まれる付加価値」を提供できるから、ということがある。これは自動型ソーシャルメディアの特徴を活かしたサービスだと考えることができるだろう。
いずれの場合においても、大きな課題はある。位置情報は、いかにデータのみを監視するといっても簡単に自宅や職場などを割り出せてしまう非常にセンシティブな情報であり、その取り扱いには最大限の慎重さが求められる。また、こうした情報を扱う上での責任の所在や補償のあり方について定めた法律や制度整備、ユーザーの理解を深める教育や啓蒙活動など、多くの公共的な取り組みと一体にならなければ、いたずらにユーザーの不安を煽ったり、ごく一部の先進的なユーザーの間だけで流行するものの、キャズム越えに失敗するサービスで終わってしまったりするだろう。
これまでソーシャルメディアに関する議論は、学術というよりはビジネスと技術動向、そして社会活動の中間くらいの領域で語られることが多かったように思う。しかしながらそこには、長らく蓄積されてきた技術的な進化があり、また場合によっては「これからの社会」を作り出す大きなビジョンに支えられてもいる。「どのサービスが儲かるか」といった近視眼的な考えで個別の現象を見たり、最新の技術動向にとらわれてコモディティ化した要素を見落としたりすることなく現在の事象とこれからのあり方を考えられるように、ある程度抽象化した「ソーシャルメディア観」を養っておく必要があるのではないだろうか。
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