ネット生保はなぜ普及しないのか?
保険の選び方と金融リテラシーの壁

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著者 新屋真摘

ネット生保の問題点

保険料の安さがクローズアップされるネット生保だが、デメリットがないわけではない。以下に、代表的な問題点を挙げてみた。

自分で選ばなければならない

当たり前のことだが、ネット生保での契約は、申込者が主体的に選択しなければならない。これがネックになって、ネット生保を活用できないという人は多い。

冒頭の相談者の話に戻るのだが、「保険そのものがよくわからない」「自分に合った商品がわからない」という人にとって、誰にも相談せずに自分で決めなければならない保険選びは、簡単なことではないのである。

弊社の相談者の例からもわかるのだが、現在の20代、30代には保険未加入者も多い。この年代の女性は、ネット通販などを利用し慣れている人も多く、本来ならば、ネットで保険に加入することも比較的抵抗がないはずだ。

しかし、買い物の対象が保険となると、積極的にネットを選択する人は少ない。彼女たちは、自ら保険が不要と判断して、保険に加入してこなかったわけではない。ほとんどの場合、たまたま、保険を考えるきっかけがなかっただけなのだ。というのも、個人情報保護の観点から、セールスレディが職場に出入りできない会社が多くなり、保険の勧誘を受ける機会がほとんどなかったのだ。そろそろ保険についても考えたほうがよいかもと思ったものの、「信頼できる人に相談しながら決めたい」「自分では内容を調べるのは面倒」という心理が働き、ネットで加入するハードルはぐっと高くなるようだ。それだけ保険は複雑だということなのかもしれない。

商品の種類が少ない

上記の話から続くのだが、保険は複雑だからこそ、ネット生保で取り扱える商品には、限界がある。ひとくちに保険といっても、どんな状態になったら保険金や給付金が支払われるかによってその種類はさまざまだ。

がん保険、三大疾病保障保険、特定疾病保障保険、収入保障定期保険など、保険商品は多岐にわたる。しかもほとんどの場合、売れ筋の保険には、保険会社オリジナルのペットネームと呼ばれる愛称のようなものがついており、ここからその保険の内容がどんなものかを判断するのは、業界の人でも不可能に近い。

このような状況のなかで、保険についての知識がほとんどない消費者が、ネット上から自分に合った商品を選ぶのは、困難極まりない。

そこで、こうした問題を少しでも解決すべく、ネット生保の商品ラインナップは、既存の保険会社のそれと比べて、シンプルである必要がある。実際に、ネット生保での取り扱い商品は、もしもの入院などに備える医療保険と、もしもの死亡に備える死亡保険を中心とした、商品の数を絞った構成になっている。

また、保険は、加入する人のライフステージや家族構成によって、どんな保障がいくら必要になるかが大きく異なる。たとえば、養う人のいないシングルの女性には大型の死亡保障は不要だ。さらに、収入の状況、加入する健康保険の種類などによって、いくらの保障が適正かについても、一人ひとり違う。

こうした違いを理解し、消費者が自ら納得できる選択をするためには、ホームページなどのコンテンツを充実させるとともに、ナビゲーションする工夫が必要になる。事実、ネット生保のホームページは、非常に見やすく、情報が整理されたレイアウトになっている。

しかし、そうはいっても、消費者がWebサイトだけで保険を理解するには限界があり、場合によっては、リアルに質問できる場として、コールセンターなどを拡大する工夫が必要になるかもしれない。

保険会社の知名度が低い

ネット生保は、誕生して日が浅く、その知名度はまだまだ低い。「はじめて聞く保険会社の名前ですが、大丈夫ですか?」│これは相談者から多い質問だ。直近では、リーマンショックの影響で、大和生命が破綻したように、過去を振り返ってみると、保険会社の破綻は珍しいことではない。消費者が、加入を検討する際に保険会社の財務体質について気になるのは当然のことだろう。

保険会社の健全性を測る指標には、ソルベンシーマージン比率というものがあり、一般にはこれを参考にするのがよいといわれている。しかし、過去には、この数字が安全圏といわれていた保険会社が破綻した例もある。何より、一般の人になじみのない数字であり、ここまで調べる人は稀だろう。

結局のところ、よく名前を聞く会社という安心感が判断基準にされることが圧倒的に多い。つまり、消費者に安心して選んでもらうためには、保険会社自体の知名度を上げていかなければならないのだ。それは、保険会社のほうでも心得ており、ネット生保のCMをテレビや雑誌などでよく見かけるようになったのは、このためだろう。

しかし、知名度アップを狙うばかりに、広告宣伝費がかさんでしまっては、ネット生保のセールスポイントであるローコストのメリットが活かせない。保険会社にとっても頭の痛い話なのではないだろうか。

健康上問題がある人は加入しにくい

保険に加入する際には、通常、告知といって健康状態を申告する必要がある。告知内容を審査され、晴れて加入が承諾されるのだ。

保険料は、健康な人が将来、保険金や給付金を受け取る確率をもとに計算されている。持病がある人や薬を服用中の人など健康状態に問題がある人が加入すると、この前提が成立しなくなるかもしれない。契約時にリスクの高い人を選別するため、告知が義務づけられているのだ。ここまでは、ネット生保も一般の保険会社も大差はない。

告知では、一般に3カ月以内の通院の有無や、2年以内に受けた定期検診の結果などを聞かれる。何もなければよいのだが、何か告知するような事柄があった場合は、一般の保険会社なら再検査の結果表を提出するなど追加書類のやり取りをしながら審査をすすめる。

ネット生保の場合、詳細情報の確認などはオンラインや郵送だけでは難しい場合があり、審査方法を簡略化せざるを得ないといった事情がある。

こうしたことから、健康上気になることがある人は、ネット生保で契約しにくいこともある。

ネット生保が定着するには

最後になったが、ネット生保が浸透していくには、こうした課題を一つずつ解決していくことが求められるだろう。

また、ネット生保の商品だから、「同様の商品と比較して最安値である」とは一概に言い切れない。反対に「告知事項があるから加入できない」や「商品数が少なすぎて、必要な保障が揃わない」とも限らない。

要するに、保険選びをするときに、ネット生保の特徴を摑んだうえで、候補の一つに加えてみようという発想を持つことが、上手にネット生保を活用するコツとなるだろう。

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