ノーベル賞とテクノロジーの経済を巡る省察 第3回 AI、情報科学、そして「ユートピア」への緩慢な歩み
不可避な進化を認めたがらない政治家

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テキスト 桐原 永叔
IT批評編集長

AIや半導体の分野を忌避して日本社会が成り立つと考える愚

さらに加えておけば、AIの普及で消費される電力とはつまりGPUをはじめとする半導体が消費するものであり、半導体の発熱を冷却するためのものである。こうした課題も、半導体の回路線幅の微細化や立体化(チップレット)することで消費電力を減少させる取り組みは進んでいるし、光電融合などの次世代技術に大きな期待がよせられるのも高性能化とともに低消費電力化が挙げられているのだ。こうした点を欠いて、AI普及と電力の関係を結論づけるのをわたしは短絡だと言いたい。
そのうえで述べておけば、ニュースをみるまでもなく、日本の経済復興、経済安全保障を担っているのはAI、半導体といったテクノロジーだし、現在、第6期(2021年〜2025年)を迎えている科学技術基本計画の目標は脱炭素社会の実現であり、カーボンニュートラル技術の開発にくわえ、AI、量子技術、バイオテクノロジーへの投資も政策の重点となっている。
この知事候補が、もし本当にポピュリズムに堕ちてAIや半導体の分野を忌避して日本社会が成り立つようにしたいのであれば、そうとうの政治力と経済力が問われる。そんなことが可能なのだろうか。
100年単位の構想としては理解もするし賛成もできるかもしれないが、次の知事選の争点にするなら、愚かとしか言いようがない。

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