複製技術と非物質的労働が変えた社会構造──ベンヤミンとネグリの思想から読む現代資本主義
刊行ラッシュの生成AI関連書で内生的経済成長を考えてみる
Microsoftのレコンキスタ
先に挙げた生成AI関連の新刊本のなかのいくつかで、OpenAIが最近になってLLMの性能の基準値といわれるパラメータ数を非公開にしたことをとりあげている。非営利法人OpenAI Inc.として立ち上げられながら、利益上限付き営利企業としてOpenAI LPを傘下に設立したのは2019年だ。この際、OpenAI Inc.設立に関与したイーロン・マスクが離脱し、このあいだ来日して岸田総理と面談もしたサム・アルトマンが実権を握った。Microsoftからも追加で100億米ドルの出資を受け、いよいよ生成AIの覇権争いに本格参入しているという見立てだ。
生成AIをめぐる競争は誰もが激化を予想している。GoogleやAmazonといったビックテックは当然として、ビックテックの研究部門を出自とするさまざまなスタートアップが巨額の資金調達を得て競争に加わってくる。
興味深いのは、ウィンドウズで90年代にはOS市場の覇権をにぎり、ブラウザがあればOSは不要となるとネットスケープに売られたケンカを、インターネットエクスプローラーを使わないならOfficeも使わせないとビル・ゲイツが迎え撃った「第1次ブラウザ戦争」で敵役を担ったMicrosoftが、結局のところ「第2次ブラウザ戦争」でブラウザだけでOSを不要にしてしまいかねないGoogle Chromeに奪われていた覇権をいまこそ取り戻さんとしているように見える点だ。失地回復にも似る。
Bardでの失態もGoogleの足をひっぱり、OpenAIを擁したBingでMicrosoftは攻勢にでている。同じように、MicrosoftのAzureはAmazonのAWSが幅を効かせるクラウドサービスでもその領土を広げつつある。
一方で、『ジェネレーティブAIの衝撃』で述べられているように、ビッグテックでさえその優位性を失いつつあり、時代はdisrupt(混乱期)に突入しているとも考えられる。よりオープンになった競争で、わずかに抜け出したのがMicrosoftというべきなのだろう。生成AIの学習データで自社データを使われたくない企業は進んでMicrosoftのサービスを選ぶ。MicrosoftのAzure OpenAI Serviceなら、ユースケースごとの許諾制をとっておりデータ管理に敏感な企業にとってセキュリティ面で安心なのだ。
Microsoftは2018年にソフトウェア開発のプラットフォームでソースコードを豊富に保有しているGitHub社を買収しており、OpenAIのGPTを活用してプロググラミングの支援ツールとしてGitHub Copilotを提供している。GitHub Copilotは世界中のプログラマーが利用しはじめている。これは経済学でいうところのネットワーク外部性の観点でいえば、今後、十分すぎる優位性になっていくだろう。
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