安全保障としてのサイバーセキュリティ戦略
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員 小宮山 功一朗氏に聞く(2)

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聞き手 都築 正明
IT批評編集部

サイバー空間における技術が覇権の遷移に大きく影響する

インターネットが物理的な事物とリンクしている、という現実感も大切ですよね。実際にウクライナでは、情報を遮断するためにテレビ塔やデータセンターにミサイルが撃ち込まれたりもしています。

小宮山 先日、台湾の方たちとのセミナーに出席したのですが、彼らは海底ケーブルを切られてしまう、ということをとても懸念しています。もしそうなれば、自分たちが世界の中で孤立してしまうのではないかと。国土が小さいですし、海底ケーブルのランディングポイントが国土の北西部に集中していますので、国としてのリスクは高いと思います。

台湾有事があった際には、日本も対岸の火事として傍観するわけにはいかないですね。国の規模としても中国はロシアの比ではないでしょうし。

小宮山 台湾有事があった際には、日本に対するサイバー空間での攻撃も行われるでしょうし、やはり沖縄でどのような情報作戦がなされるかということが気になるところです。一方、中国の IT 技術は、計り知れないものがあります。大学院の研究テーマとして北朝鮮の研究をした、と言いましたけれど、当時でも中国のサイバー攻撃能力は北朝鮮の10 倍ほどの厚みや深みがありました。その後、右肩上がりの経済発展を遂げている現状では、質量ともにさらに大きくハイレベルになっていると考えられます。これについては、もっと詳しく調べていく必要があると思っています。

先ほど述べられていたサイバー攻撃能力の世界図絵の重要性も増してくるし、各国の構図も次第に塗り替わっていくことになりますね。

小宮山 過去にさかのぼっても、火薬・航空機・戦車から核ミサイルへと、新しい技術が生まれると、戦争の形も変わり、覇権を持つ国家も遷移します。新しい技術を手にして効果的に活用した国家が強い影響力を持つという歴史の上では、現在はサイバー空間における技術が大きな影響を持っています。私もまだまだ研究を進めていかなければならないと考えています。(了)

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