サイバー空間という闘争領域とその拡大
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員 小宮山 功一朗氏に聞く(1)
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2022.11.17
聞き手
都築 正明
IT批評編集部
当事者国の背後にどれだけサイバー攻撃能力のある国家の戦いがあるか
今回の戦争では、ロシアの Killnet のようなハクティビストやハッカー集団、またウクライナが募った IT 義勇軍などについても報じられています。こうした国境を持たない集団がある程度の存在感を持つことも考えられるのでしょうか。
小宮山 短期的には、ある程度の影響力を及ぼすことはあるかもしれません。しかし、どの程度組織化されているかが不明ですし、短期スパンを超えて存在するかどうかはかなり疑わしいですから、長期的には大きな影響力を持つとは考えていません。
では、サイバー戦争としての今回の戦争を考えるにあたって、戦闘能力についてどう捉えればよいのでしょうか。
小宮山 重要なのは、ロシアのサイバー戦能力やウクライナのサイバー戦能力、という国家単位でなく、 それぞれの国を後方で支える国の能力という観点から捉えることです。ウクライナに対して、アメリカがどの程度の支援をしているのかは明らかではありませんが、相当踏み込んだ協力をしているのではないかと推察できます。だからこそ、ウクライナは現在まで防戦を続けられているのではないかと考えられます。そう考えると、いかにアメリカの情報収集能力が秀でているか、ということを窺い知ることができます。サイバー戦争においては、当事者国だけでなく、背後にどれだけサイバー攻撃能力のある国家の戦いがあるか、ということを考慮しなければなりません。