アクロニス・ジャパン代表 川崎哲郎氏に聞く(2)
中小企業のサイバープロテクションを日本市場に定着させる

インターネットに接続しているということは、世界中のどこからでもランサムウェアの標的になりうる。2回目は、中小企業に広がるランサムウェア被害とアクロニスの取り組みについて聞いた。

川崎 哲郎(かわさき てつろう)
アクロニス・ジャパン株式会社代表取締役社長。早稲田大学理工学部数学科卒業。日本ディジタルイクイップメント(DEC)、ミップス・コンピュータシステムズ(MIPS)、サン・マイクロシステムズ、エフセキュア、SUSEソフトウエアソリューションズジャパンを経て、2022年2月、アクロニス・ジャパン代表に就任。IT業界黎明期より、30年以上にわたりセールス及びマネジメントを経験。
アクロニス(Acronis)について
アクロニスはデータ保護とサイバーセキュリティを統一し、現代のデジタルワールドのセーフティ、アクセシビリティ、プライバシー、真正性、セキュリティ (SAPAS) の問題を解決する統合化、自動化されたサイバープロテクションを提供している。2003年にシンガポールで設立され、2008年にはスイスで法人登録されたアクロニスは、世界18カ国、33都市に拠点を持ち、従業員規模は1,500人以上。アクロニスのソリューションは550万人以上の個人ユーザーおよびフォーチュン1000に名を連ねる企業の100%や一流のスポーツチームをはじめとする50万社以上の企業に信頼されている。アクロニスの製品は150カ国以上に広がる50,000社のパートナーやサービスプロバイダーを通して、40以上の言語で利用されている。
目次
- ITの進化は悪意ある人たちにも恩恵を与える
- 犯罪への参入コストを低くした“ランサムウェア・アズ・ア・サービス”
- ランサムウェアは低リスク高リターンの犯罪である可能性が高い
- ランサムウェア被害は対岸の火事ではなく今そこにある危機
- バックアップでIT弱者である中小企業のIT基盤をしっかりと守っていく
- 最先端の技術を取り入れていくことで提供するサービスを向上させていく
ITの進化は悪意ある人たちにも恩恵を与える
IT業界で長く仕事をしてきて改めて思うのは、グッドウィルでITに関わってきた人々や企業によって、個人の生活が飛躍的に便利に豊かになり、企業も効率が上がり恩恵に浴しているということです。当たり前のことを言っているようですが、ITは確実に人々の役に立っているし、なくてはならないものになっています。
クオリティー・オブ・ライフはITによって相当上がっていると思います。少し昔話をすると、私が最初に就職した会社には、ネットワークのインターフェースボードがあったのですが、これが非常に大きなものでした。10Mbpsぐらいのものすごく低速なネットワークなのですが、当時は結構画期的で、このインターフェースボード1枚が141万円したことを覚えています。その当時のコンピューターといえばスタンドアローンが当たり前でしたから、この30年の半導体技術やIT技術の進化がいかに人々の生活を変えたかということです。
しかし一方では、悪意を持つ人々もITの恩恵を受けています。しかも、残念なことに、いわゆる悪意のあるハッカーは、技術レベルで見ると大変に優秀だったりします。
私たちの世界が善意の人間だけで構成されているわけではないということは紛れもない事実です。善意の人たちがITをより便利に活用できるように技術を進化させるのと同時に、一方では悪意に満ちた人たちも技術力を高めていきます。このいたちごっことも言える状況がおそらくは続いていくのだと思われます。