東京都市大学教授 大谷紀子氏に聞く
第4回 生物の行動に学び最適解を探る遺伝的アルゴリズム
大学研究室でシステム開発のフローとスキルを獲得
――先生は“大谷研プロジェクト”として学内のさまざまなシステムも構築されていて、学内の優秀教育者賞を受賞されているのですよね。
大谷 これも学内のご縁からはじまりました。図書館の事務員をされている方とお酒を飲みに行ったときに「せっかく同じ部署にいるのだから、いっしょになにかしたいよね」という話をしていて、図書館システムをつくる話になりました。私の研究室にはプログラミングが好きな学生がたくさんいるので、実践的な課題として学生につくってもらうことにしました。初年度に図書館のシステムをつくったら、それを聞いた別の部署の事務の方から依頼があって、研究室配属システムや、研究室や教室等の使用願申請システムをはじめ、毎年さまざまなシステムをつくることになりました。完成しなければ3年生の必修単位をもらえないので「ブラック企業みたい」とも言われていましたが、就職活動で学生がこの話をすると、各企業が内定を出してくださるので、結果的には学生のためになっていると思います。
――勉強だけでなく、キャリア形成にもなっていますね。プロジェクト完成までに、どのようなスキームで実践されるのでしょう。
大谷 担当の事務の方は専門用語もわかりませんし、どんなものができるのかもわかりません。4年生がきちんと要望をヒアリングして汲み取り、工程を説明して設計します。仕様書ができたらそれを3年生に渡して、3年生は 1人でシステムをつくります。全員がそれぞれに作業をして、夏休み明けに成果物を発表して、コンペ形式でよいものを選出します。
――3年生と4年生で、要件定義からコーディングをするとなると、SEの上流工程から下流工程までを経験するわけですね。たしかに就職活動では大きな強みになりそうです。
大谷 プログラミングが好きでない学生は、絶対に私の研究室には来ません。むしろ「ブラックのどこが悪いの?」という学生ばかりです。なにせ合宿に行ってもみんなで集まってプログラムを組んでいますから。
――そうすると、SEやプログラマーに欠けがちな協調性や声かけについても学べることになりますね。
大谷 そうした教育効果は大いにあると思います。