AIの民主化と、AIによる民主化 イノベーションの望ましい帰結
第1回 テクノロジーの転換点 生成AIはどのように社会に定着するか
あと1〜2年のうちにアーリーマジョリティ層に普及
話をすこし戻す。ムーアのキャズム理論でもっとも困難とされるのが、アーリーマジョリティへの浸透、普及である。彼らは極めて実利的な判断に基づいて導入を決定するため、リスクを嫌い世間の全体的な動向となるまで慎重な姿勢を保つからだ。
インターネットや電子メールが、イノベーター、アーリーアダプターから、深いキャズムを超えてアーリーマジョリティ層へと本格的に普及しはじめたのは、1990年代後半から2000年代初めと考えていいだろう。その頃には、インターネットや電子メールを使わないと不便という認識が広まって、使用者とそれ以外の人で情報や効率の格差が生まれるようになっていった時期だ。
SNSではどうだろう? 欧米と日本では若干の時差があるものの、概ね2000年代の中盤から2010年代の初頭にかけて、SNSはアーリーマジョリティ層への普及を果たしている。若者を中心としてmixiやGREEが広がり、アカウントを持ってないと遅れていると認識されようになったのが2000年代後半で、Facebook、Twitterの上陸によって若者より少し上の世代にも浸透していき、やがて企業がアカウントを開設することで、SNSを活用できないとビジネスで取り残されるような状況になっていった。
インターネットにしてもSNSにしても、イノベーター、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの移行はおおよそ5年を要している。
翻って生成AIについてはどうか。GPT-3.5の公開が2022年秋だとすると、2025年の現在はアーリーアダプター層に急速に拡大しているところと見て間違いないだろう。そう考えれば、あと1〜2年のうちにアーリーマジョリティ層に普及して、おそらく都市圏のビジネスパーソンや若者たちにとって、当たり前の日常ツールになるはずだ。