テクノロジーはイデオロギーから遠く離れて ポストモダンからポストヒューマンの時代へ
第2回 新しい階級闘争と中間層の再構築

現代社会は、「テクノクラート新自由主義」によって、権力を握るインサイダーと社会から疎外されたアウトサイダーに分断されている。この対立を克服するため、リンドは「民主的多元主義」を提唱する。多様な共同体が公平に代表される仕組みは分断を埋めることができるのか。
目次
インサイダーとアウトサイダーをつなげる中間層
リンドの『新しい階級闘争』では、「テクノクラート新自由主義」によって社会はインサイダーとアウトサイダーに分断されて、それが対立していると論じる。
テクノクラート新自由主義とはつまりメリトクラシー(能力主義)、テクノクラシー(専門家主義)に牽引される社会を表す言葉だが、リンドはこれまでのメリトクラシーの説明と同じく、テクノクラート新自由主義はかつての世襲的階級社会を消滅させたという。生まれつきの格差がない社会で勝てなかった人たちの偏見や不満がポピュリズムの原因になっていると、新自由主義者は考える。ここもメリトクラシーによって生まれた格差に対する上流側の解釈と同じだ。
リンドはかつての階級社会もその社会が生んだイデオロギーも欧米にはすでに存在しないことを前提に、新しい階級闘争を、権力が集中する専門技術者と管理者(経営者)からなる上流層と、低層の国民と移民が構成する労働者層の間に生じているとする。上流層は社会体制のインサイダーとして政治・経済・文化の決定権を握り、労働者層は体制のから疎外されたアウトサイダーとなるしかない。このインサイダーとアウトサイダーの対立が新しい階級闘争の内実なのだ。
インサイダーは、アービトラージの源泉となる経済のグローバル化と自由競争によってますます権力を寡占していき、一方のアウトサイダーはその分だけ社会からの疎外を深めていく。アウトサイダーはローカルに縛られ技術的な進化から取り残されてしまうためだ。
だからこそ、リンドはポピュリズムの台頭を「エリート支配に対する大衆の反発」として説明し、この新しい階級闘争の解決を「民主的多元主義」に求める。