東京都市大学教授 大谷紀子氏に聞く
第3回 AIの自動作曲が日常生活を愉しくサポートする

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聞き手 都築 正明
IT批評編集部

日常を音楽で愉しく彩るためのチャレンジ

 

――コーヒードリップのほかの取り組みもされているのでしょうか。

 

大谷 いままでに4種類の行動に合わせた音楽システムをつくりました。コーヒーのほかに、歯磨きの音楽とカップスープを溶く音楽、またインターバル速歩の音楽の作曲システムをつくりました。カップスープは、混ぜ方やスプーンを回す回数などを工夫してつくると驚くほど美味しいです。上手なカップスープのつくり方を誘導する音楽について研究していた大学院生は、いまは研究でつかったカップスープを製造・販売している食品メーカーのIT関連サービスを提供するグループ会社で働いています。

 

――インターバル速歩というのは、どういうものなのでしょう。

 

大谷 これは高齢者向けなのですが、3分速く歩いて3分ゆっくり歩いてということを繰り返すと、効率よく体力増進をはかることができます。時計をみながらだと単調で退屈なものになってしまいますから、自動作曲された音楽を用いて、飽きずに繰り返すよう促すシステムです。

 

――高齢者向けのシステムはニーズが高そうですね。ホームヘルパーさん向けの時短レシピと音楽とを組み合わせて、テレビ番組のように3分で料理ができたりですとか。お米を研ぐときの音楽もほしいです(笑)

 

大谷 それはよいですね。つい手を抜いてしまったり、研ぎすぎてしまったりすることがありますものね。お米マイスターのような方のデータを取れば、よいものができそうです。

 

――音楽をつかっていても、それに飽きると耳障りになることもありますから、音楽をその都度つくってくれるとよいですね。ハンバーガーショップでフライドポテトが揚げ終わったときの音ですとか、コンビニエンスストアの入店音ですとか。

 

大谷 働いている人にとって煩わしくなっていることが愉しくなれば、より心地よい接客ができそうですね。私の研究が、日常生活を豊かにできると嬉しいです。いま取り組んでいるのは、コーヒーを淹れるにしても、もっと個人の気分に合わせたものに誘導するシステムの研究です。はじめに学生のコーヒーの淹れ方をもとにしたと言いましたが、その後はプロの方にご協力いただきました。でも、ほかの方に協力を依頼するとコストがかかるので、結局自分でコーヒーインストラクターの資格を取得しました。資格取得にあたって勉強をしたところ、美味しいコーヒーというものは1つではないことを知りました。それを、淹れ方によって酸味を強くしたり苦みを強くしたりと、バリエーションを増やせないかと考えています。気分によって飲みたいコーヒーを淹れることを誘導する音楽を作曲するシステムにしようと、さまざまなチャレンジをしているところです。

 

 

 

第4回に続く

 

 

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