世界モデルはAIのフレーム問題を解決した？

──ぜひこのお話を伺おうと思っていたんですけど、世界モデルを構築できることで、AIのフレーム問題*が解決できると考えてもよいのでしょうか。

鈴木　今までフレーム問題がなぜ言われてきたのかというと、特定のタスクを実行する際に、膨大な選択肢の中からタスクに必要な情報を適切に選択することがAIにとって難しいという点にあります。つまり、AI自身が世界を適切に認識したり予測するモデルを持たないまま、どういう風に行動すればいいか学習しようとして躓いてきたからです。

──なるほど。世界モデルがあればフレーム問題は解決できるということになりそうです。

鈴木　私の意見としてはほぼ解決したと言ってもいい。世界を適切に捉える予測モデルさえあれば、その上でプランニングすることは比較的簡単なので。あるいは、フレーム問題は世界モデルをどう学習するかという問題に変わっていると考えてもいいかもしれません。

──本当ですか。そういう意味で言うと、製造業など人間の技術がものをいう領域で世界モデルは活用できそうですね。

鈴木　おっしゃる通りですね。そこはすごく関係してくると思います。世界モデルをベースにつくっていくことでフレーム問題の話は解決するかなと思います。工作ロボットが果たすべきタスク上、必要な予測モデルをデータから学習できれば、このように動かしたらこうなるだろう、といったようにロボット自身が行動した結果を予測可能になります。あらかじめどうなるかわからないというのと、どうなるか予測できたうえで行動するのは全然ちがいますから。

＊フレーム問題：人間はある程度の選択肢を排除して最適なプロセスを計画できるが、AI（人工知能）の場合、本来問題解決には必要のない背景も考慮して計算しつづけてしまい、情報処理能力を超えて機能が停止する問題のこと。

→第４回に続く