理論を実践に 先駆者が語る半導体開発の軌跡
半導体エネルギー研究所顧問・菊地正典氏に聞く 第1回

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聞き手 桐原 永叔
IT批評編集長

「エンジニアはV字型人間になれ」

 

──80年代ぐらいですか。

 

菊地 そうですね、

 

──まさに日本が半導体で盛り上がっていた時期ですね。

 

菊地 私は研究開発に近いところと、量産のところの両方を見ていたので、他の人に比べて全体を見渡すことができた。それと、一部分の担当ではなく、全部の担当をやっていたので、デバイスだけじゃなくて、それに使う装置とか、材料とか、製造のラインとか、プロセスとか、全般的にすごく勉強させられたというか、経験することができました。それは得難い経験だったと思います。

 

──半導体製造の場合、ものすごく細かいプロセスがあって、材料も多岐にわたり、それぞれに最先端を競っているという印象ですが、菊地さんのように網羅的に全体を理解されている方は珍しいのではないですか。

 

菊地 そうですね。特に私たちの後に業界に入ってきた人たちは、即戦力としてある部門に配属されると、そこでずっと実務を与えられてしまいますから。

 

──スペシャリストつくるわけですね。

 

菊地 私の頃はもっと遊べた気がします。NECに入って良かったのは、小林宏治という会長がいて、彼が、「エンジニアはV字型人間になれ」って言っていたんですね。大きなVにするには、深さを追求するのであれば、横も広げないといけない。

 

──なるほど。

 

菊地 そういうことを身に染みて教育されました。特定の部門に詳しくなるだけでなくて、業界の全体を見て技術も全体を見ないと、いびつなVになってしまう。これは自分のモットーとしてやってきました。

第2回に続く

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