半導体のカーテン、コンピューティングパワーの天井
技術、経済、地政学から現在の論点をみる
第3回 日の丸半導体の現在と新たな期待
さらに現在、電気に変わって光で回路をつなぐ光電融合技術や量子コンピューティングといった次世代技術が出現している。光電融合技術はNTTが半導体のチップレット技術を活用する「光チップレット」によって、2ナノメートルさえ超える(ビヨンド2ナノ)半導体開発への採用をラピダスに働きかける見通しで、「光チップレット」は早くて2028年の商用化を目指している。そんな現在だからこそ、ラピダスの挑戦に勝算があるのだと小柴氏は熱弁をふるう。
すでに発表されているようにベルギーの半導体研究機関であるIMECが日本拠点を北海道のラピダス工場建設予定地につくるだけでなく、オランダのASMLも同地に拠点をつくりラピダス支援に乗りだすとの話もあり、ラピダスは国内だけでなく世界の半導体サプライチェーンからも注目を浴びる存在になっている。
GaN(窒化ガリウム)についてすこし付言しておくと、青色発光ダイオードの発明でノーベル賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授は著書の『次世代半導体素材GaNの挑戦 22世紀の世界を先導する日本の科学技術』(講談社+α新書)で、米中に比して低下一方にみえる日本の研究開発力に関しても、じゅうぶんに世界に伍していけるものがあると述べている。よくある研究論文の提出数では計れない技術力があるというのだ。
ビル・ゲイツに憧れたという天野教授は、研究開発も「死の谷」を超えて実用化を目指すことを理想とする。そのなかで、発光ダイオードの実現させた素材GaN(窒化ガリウム)の可能性を論じる。SiC、GaNは日本が得意とするパワー半導体に最適な素材であり、パワー半導体はEVや自動運転などモビリティ分野で必須となるものだ。
大きな電圧を制するパワー半導体はまた次世代のエネルギーシステムであるIoE(Internet of Energy)にとっても非常に有効な技術になると天野教授は唱える。そして、そこにこそ日本の産業が世界でのポジションを復活しうる大きな可能性があるという。