半導体のカーテン、コンピューティングパワーの天井
技術、経済、地政学から現在の論点をみる
第2回 半導体市場の覇権をめぐり鎬を削るプレイヤーたち

REVIEWおすすめ
テキスト 桐原 永叔
IT批評編集長

今や世界経済の重要な指標となっている半導体業界は、垂直統合型のIDM企業や水平分業型のファブレス(設計工程)、ファウンドリー(前工程)、OSAT(後工程)企業によって構成され、多様なビジネスモデルが存在する。それぞれの分野におけるメインプレーヤーを概観していこう。

 

 

目次

景気を占う半導体企業

半導体企業のさまざまな形態

 

 

 

 

景気を占う半導体企業

 

②の経済こそ、いま現在の半導体の話題の中心になっているものだ。
グローバルに細分化されたサプライチェーン、ファブレスとファウンドリー、工程ごと、製造装置ごと、素材ごとの市場シェア、国ごとの支援額の多寡、企業ごとの投資競争……。
それぞれの論点にメインプレイヤーがおりキーパーソンがいる。
半導体の話題に一般的に注目を浴びさせるきっかけとなったのは、ChatGPT-3.5公開以降に株価が急騰したNVIDIAだろう。それこそ飲み屋で酔っ払いが「NVIDIAの株が欲しい」などと放言するのを耳にするぐらいだ。バブルの頃に民営化したNTT株について、同じような戯言を聞いた記憶がある。
NVIDIA株の好調に引っ張られたのか、関連の株も軒並み上昇した。一部ではGPUバブルと囁かれるほどだ。好調な決算にもかかわらず株価を下げた局面ではそういうふうにも見られたが、数日して株価はもとの高値水準に戻している。
とはいえ、ふだんは半導体に興味もない人たちでさえ「NVIDIA」と口にするようになるのはどこかアメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディの父であるジョセフ・P・ケネディの逸話を思い出させるものがある。ジョセフはウォール街で働き株式投資で財を成して政界に進出したことで有名だが、あるとき、ウォール街で靴磨きの少年が靴をみがきながら「いま株を買えば大儲けができる」と話すのを聞いて、保有していた株を売却した。
こんな子どもまで株価が上がると言うのは相場が行き着くところまで行き着いたということだと判断したのだ。事実、その直後1929年10月の世界恐慌が起きて株価は暴落する。
飲み屋の酔っ払いをウォール街の靴磨き少年と同じにみるのはいささか間違いなようだが、GPU関連株の株価はもしかすると行き着くところまで行っているのかもしれない。
前回紹介した「週刊ダイヤモンド」や「週刊 東洋経済」、「週刊 エコノミスト」の半導体特集にはすべて「注目の半導体関連銘柄!」といった記事が入っている。
技術のところで解説したように、半導体の製造プロセスは非常に細分化されており、それぞれに特殊な技術が問われる。ということは、それだけ個性的な企業が国内外に数多くあるというわけだ。日本に関しては市場シェアを独占しうるような企業は限られるのだが、どの分野にもシェアを確保している企業がいる。

1 2 3 4